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理科での取り組みが期待される小学校プログラミング教育

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プログラミングを実践する教科
 2020年度から始まる小学校プログラミング教育は、自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要か、どのように改善していけばより意図した活動に近づくのかということを論理的に考えていく力=「プログラミング的思考」を育むために行われる。
 それゆえ、小学校においては教育課程全体を見渡し、プログラミングを実施する単元を位置づけていく学年や教科等を決定する必要がある。こうしたなか、算数や総合的な学習の時間などの教科とともに期待されているのが、理科の授業での取り組みだ。

6年の単元「電気の利用」で実践
 プログラミング教育の円滑な実施に向けて、官民が一体となって普及・促進を進める「未来の学びコンソーシアム」では、小学校理科においてプログラミングを体験しながら論理的思考力を身につけるための学習活動を行う場合の単元として、第6学年の「A物質・エネルギー(4)電気の利用」を提示し、実践事例を公開している。
 この単元では、日常生活との関連として、エネルギー資源の有効利用という観点から、電気の効率的な利用について捉えることが大切になる。内容的には、(ア)電気は、つくりだしたり蓄えたりすることができること。(イ)電気は、光、音、熱、運動などに変換することができること。(ウ)身の回りには、電気の性質や働きを利用した道具があることの3つで構成されているが、プログラミング教育は、この中の(ウ)に位置づけて実践することが期待されている。

子どもが操作し、繰り返し試せる教材を
 特に理科では問題解決の活動として「実験・観察」が中核をなすことから、実際に子どもたちが操作して、繰り返し試すことができる教材であることが望ましい。東京都あきる
野市立西秋留小学校では、ここに「MESH(メッシュ)」というプログラミングツールを活用している。
 「MESH」はさまざまな機能をもった小さな電子タグで、タブレットに無線でつなぐことで、LEDやモーターなどへの通電を制御するプログラムを作ることができるのが特長。操作は画面上のアイコンを動かすだけと子どもでも簡単なため、コンピュータに意図した処理を行うよう指示することを体験しながら、論理的思考力を育成することを目指す。
 また、教科としての内容をプログラミングと関連させていくため、省エネルギーと日常生活を関連づけて考えられるように学習を計画。これにより、センサーなどを用いて、目的に応じて電気の働きを自動的に制御しているものがあることに気づき、電気を利用した道具の使い方を見直せるように図っている。

電気を効率よく利用する仕組みを考え、身近な問題に気づく
 横浜市立西富岡小学校では、電気の効率的な使い方について学ぶために、入力した条件に応じてものを動かすことを体験できる「スタディーノ」というプログラミング用ソフトを活用。小型扇風機にセンサーを取りつけて、「電気を効率的に利用するにはどのようなプログラムにするとよいか」を予想する授業を展開した。
 ペア活動の中で考えた「人感センサーを使って、人が近づいたら電気を動かすことでムダをなくす」といった予想をもとに、思い通りの動作になるまで試行錯誤する子どもたち。そこでは「もう一度、入力したデータを見直そう」など、話し合いながら改善している様子が見られたという。
 授業ではその後、日常生活で電気を効率よく使うためにセンサーを使っているもの。どのようなセンサーを使ったら、もっと効率的に電気を使えるようになるかなどについて話し合いを行った。その結果、「身近にある電気を効率よく使っていきたいというESDの視点にもつながった」と評価している。

理科の体験的な活動の1つとして
 このようにプログラミング教育を行うことで、理科で学んだことが自分たちの生活や社会と関係しているという意識が高まり、理科を学ぶことの意義や有用性を実感することにつながることが期待できる。また、現在の我々の社会を豊かで便利なものに変えているのは、コンピュータなどの情報技術の進展があってこそ。その基礎となる思考に小学生のうちから触れさせることが、今回のプログラミング教育のねらいになっているはずだ。
 とはいえ、まだまだ「何をどうやっていいか分からない」という先生方も多いのも事実。しかし、プログラミングも理科の体験的な活動の1つとして捉えれば、教科のねらいに関連づけたり、考えを深めたりする学習に利用することができる。
 そうした意味でも「未来の学びコンソーシアム」では、「プログラミング教材を使ったことがないという先生には、ここにある事例を参考にしながら授業づくりに活かしてほしい」と訴えている。

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