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(PISA2018)国際学力調査 読解力が顕著に低下

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コンピューター方式が影響か

経済協力開発機構(OECD)が2018年に行ったPISA(学習到達度調査)で、日本の読解力の平均点と順位が、前回より顕著に低下した。OECDに加盟する37カ国中11位だった。文科省は結果について、読解力だけでなく、「コンピューター画面上での長文読解への慣れなど、さまざまな要因が影響している可能性がある」とみている。数学的リテラシーと科学的リテラシーはそれぞれ1位と2位で、これまでと同様、世界トップレベルだった。

 OECDが日本時間の3日、公表した。調査はコンピューター方式で15歳を対象に実施。日本では183校の約6100人の生徒が参加した。
 毎回、重点的に測る分野を設定しており、2018年は読解力だった。最初に出題される問題の結果によって、その後の問題の難易度が変わる「適応型テスト」を初めて導入した。
 日本の読解力の成績は前回(2015年)より12点低い504点。2回続けて低下した。得点下位層(408点未満)のグループが増加していた。
 日本の生徒の正答率が低かったのは、同じ商品について書かれた企業のウェブサイトと雑誌のオンライン記事を比較し、根拠を示して自分の考えを説明する自由記述の問題などだった。読解力の分野で問題ごとの解答を分析したところ、自由記述で「問題文からの引用のみで、自分の考えを他者に伝わるように記述できていない」などの傾向が見られたという。
 文科省は、正答率低下の要因には生徒の読解力だけでなく、コンピューター方式への移行も影響しているとみる。2015年調査から移行したコンピューター方式は、オンライン上の形式から取った電子メールや投稿文などを素材に出題される特徴がある。また、解答を終えて次の大問へ進むと、前の大問には戻れない。こうした調査設計に日本の生徒が慣れていないことも成績低下とは無関係ではないという。
 調査問題は非公表だが、公開問題もある。2018年調査で公開された問題はラパヌイ島(イースター島)についてのブログ、書評、記事を読み、そこに書かれている情報を探したり、文章を理解したりすることを問う内容だった=問題例。三つのうち最も文章が長かったブログでも1000字程度だった。

 元文科省教科調査官で、今回の調査結果の分析に関わった川村学園女子大学の田中孝一教授も「日本の学校で学んできた生徒にとっては、PISAの設問内容や出題方式には、違和感を持つものがあったはず。得点や順位は下がったが、さまざまな要素が関係しており、実態として日本の生徒の読解力が低下したとまで言い切れるかどうかは分からない。全国学力・学習状況調査の結果を見る限りは、読解力が低下しているようには感じられない」と話す。
 一方、日本の数学的リテラシーは527点(1位)、科学的リテラシーは529点(2位)。得点下位層のグループが少なく、上位層が多いのが特徴だった。読解力と科学はいずれもエストニアが1位だった。
 OECDに加盟していない国や地域単位での参加も合わせると上位にはアジアの国が並んだ。79カ国・地域で読解力、数学、科学ともに「北京・上海・江蘇省、浙江省」(中国)が1位、シンガポールが2位、マカオ(中国)が3位だった。中国は参加地域が増加傾向にあるものの、国土の規模などを理由に、国としての参加は見送っている。

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