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全国で増え続ける学童保育、運営や料金はどうなっているの?

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 日中に保護者が在宅していない小学校児童に放課後や夏休みなどの間、遊びや生活の場を提供する学童保育が、全国で急増しています。厚生労働省の集計では、2019年で全国に約25881カ所に達し、過去最高を更新しました。共働き世帯の増加から学童保育の必要性は増すばかりですが、学童保育の仕組みや料金体系はどうなっているのでしょうか。

学童保育の受け入れ対象は施設によってまちまち

 学童保育は放課後児童クラブとも呼ばれ、放課後や夏休みなどに保育サービスを提供する事業です。主に利用しているのは、保護者が日中働いている共働き世帯やひとり親世帯。子どもを見守る職員が配置され、安全管理された中で遊びや生活の場を提供し、保護者の仕事と子育ての両立を助けています。

・児童福祉法改正で受け入れ対象は拡大

 受け入れ対象は1997年に法制化された際、小学1年生から3年生とされていましたが、2015年の児童福祉法改正で小学6年生まで受け入れ可能になりました。ただ、横浜市港北区の学童保育が小学6年生まで受け入れているのに対して、東京都文京区では小学3年生までに限定しているところがあるなど、施設によってばらつきがあります。

・自治体の財政難から公設民営型が増加傾向

 学童保育は地方自治体と民間の双方が運営しています。厚労省によると、自治体が設置者になり、小学校や児童館など公営施設を使って運用している公設公営型が2018年5月現在で全体の33.2%。自治体が設置者となって社会福祉法人など民間に運営を委託する公設民営型が46.3%、NPO法人や社会福祉法人など民間が設置者となり、民間施設を使って運営する民設民営型が20.6%です。半数以上が小学校内に設置されており、最近は自治体の財政難から公設民営型の施設が増えてきました。

登録児童127万人、それでも待機児童が増加

 厚労省によると、全国の登録児童数は1999年に約36万人でしたが、2019年に約130万人を数えました。施設数も1999年の約1万カ所が2019年に約2万6000カ所に増えましたが、待機児童数は2015年以降1万7000人前後で推移しています。

・学童保育がない自治体への対応

 厚労省は放課後子ども総合プランで2019年度までに30万人分の受け皿整備を掲げ、2018年度に目標達成を1年前倒しして達成しました。しかし、地域によって学童保育がない自治体があり、利用したくても利用できない世帯があることを考えると、登録希望者の増加に整備が追いついていない一面も見えます。このため、厚労省は2019年度から5年間でさらに約30万人分の施設整備を進めることにしています。

・共働きやひとり親世帯の増加が登録児童数に影響

 少子化で子どもの数が減少しているにもかかわらず、登録児童数が増えているのは、女性の社会進出と共働き世帯の増加があるからです。内閣府の男女共同参画白書によると、専業主婦がいる世帯は全国で1980年に1114万世帯ありましたが、2017年に641万世帯とほぼ半減しました。

 これに対して、共働き世帯は1980年の614万世帯が2017年で1188万世帯まで増えています。ひとり親世帯の増加も影響しています。厚労省によると、ひとり親と未婚の子どもの世帯は全国で1986年の191万世帯が2017年に365万世帯に増加しました。否応なく仕事と家庭を両立しなければならない事情から、学童保育を頼りにしているわけです。

公設と民設で運営方法に大きな違い

 公設と民設の学童保育では運営方法に違いがあります。開設時間や料金システム、プログラム内容も異なってきますので、事前に十分下調べしておいた方が良さそうです。

・保育延長時間は民設で午後10時ごろまで

 公設の学童保育は放課後の開設時間を下校時刻から午後5時または6時までとしているところが多くなっています。延長時間は自治体によってさまざまですが、午後7時か8時までにしているところが目立ちます。

 夏休みなど学期間休業中は午前8時半から9時に受け入れを始めるところが大半です。大阪市の場合は下校時刻から午後6時までで、休業中は午前8時半から受け入れています。これに対して民設は午後10時ぐらいまで延長してくれるところが少なくありません。

・料金は民設が公設の10倍程度

 公設の学童保育は原則として税金で運営されていますので、月平均の利用料が3000~7000円とかなり安くなります。これに対して、民設は月4万~7万円とかなりの高額です。保育サービスだけでなく、イベントや夕食のサービス、学習塾のようなサポート機能を持たせており、これらサービス料金が含まれています。

・民設は公設にないサービスがセールスポイント

 公設の学童保育は勉強の時間が決められておらず、のびのびと遊んでいるところが多くなっています。しかし、民設は学習時間を決め、学童保育中にその日の宿題を終えるようにしているところが目立ちます。

 送迎や夕食、入浴のサービスに加え、長期休業中にキャンプなど公設でできない大規模なイベントを催すケースが増えてきました。塾のような学習サポートや英語学習も当たり前になりつつあります。民設の学童保育はこうしたサービスで利用者を集めようとしているのです。

施設整備と保育の質向上が必要

 女性の社会進出や共働き世帯によって学童保育は今後も増え続けるとみられています。
これからの時代に仕事と家庭の両立を支えてくれる学童保育は欠くことができない存在です。公設と民設の違いをしっかりと理解し、仕事と家庭の両立を図る必要がありそうです。

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