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保護者の期待高まる放課後等デイサービス。運営の適正化が今後の課題に

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 6歳から18歳までの障害児が放課後や夏休みなどの長期休暇中に通う放課後等デイサービスが、2012年に児童福祉法に位置づけられて以来、大幅に増えています。

 しかし、利潤だけを追求し、支援の質が低い事業所の増加が大きな問題に浮上してきました。厚生労働省は指定基準を厳格化して運営の適正化を進めています。放課後等デイサービスの現状について詳しく調べてみました。

障害児の居場所として施設数、利用者とも急増

 放課後等デイサービスは障害児が通い、放課後や夏休みの居場所にする場所です。同時に生活能力向上に必要な訓練を受けられ、「障害児の学童保育」と呼ばれています。対象は6~18歳の障害児。継続して支援が必要と判断されれば、満20歳まで利用できます。

 厚労省によると、全国にあるサービス事業所は2019年度で約1万3500カ所。2012年度の約3100カ所から毎年2けたの伸びを続けてきました。利用者数は2019年9月で約22万8000人に達しています。急激な成長の裏には保護者の期待の大きさを反映した結果といえます。類似サービスとして日中一時支援事業がありますが、こちらは日中に介護できる人が自宅にいない障害児を受け入れるサービスで、市町村が介護する家族の負担軽減を目的に実施しています。

障害児の健全育成と保護者支援が基本的役割

 厚労省は施設運営の全国に共通した枠組みとして2015年、事業所が留意すべき事項をまとめたガイドラインを策定しました。ガイドラインでは、サービスの基本的な役割として、障害児の健全育成を図って社会参加を後押しするとともに、保護者の支援を進めることを掲げています。障害児の居場所になって必要な訓練を提供するだけでなく、子育ての悩みについて保護者の相談を受け付け、保護者が担うケアを一時的に代行することも重要な役割です。

4つの基本活動を組み合わせてサービス提供

 放課後等デイサービスでは以下4つの基本活動を組み合わせて提供すると規定されています。

・自立支援と日常生活の充実のための活動
・創作活動
・地域交流の機会の提供
・余暇の提供

 ガイドラインは事業所に対して、障害児が混乱しないよう学校との一貫性に配慮しながら、多様な訓練や活動を体験できるメニューの工夫を求めています。

児童発達支援管理責任者が個別支援計画作成

 施設ではさまざまな人が働いています。管理者は事業所の最高責任者で、スタッフや施設の管理を担います。必要な資格は特にありませんが、常勤であることが求められます。

 障害児や保護者の声を聞き、個別の支援計画を作成するのが児童発達支援管理責任者です。実務経験を持つ人が都道府県の研修受講でなることができ、各施設に最低1人は常勤で専従の人を置かなければなりません。指導員は個別支援計画に基づき、障害児の療育を進めます。機能訓練担当職員は理学療法士などの資格を持ち、機能訓練を指導します。

悪質事例の情報が相次いで厚労省や自治体に

 放課後等デイサービスは制度創設後、民間事業者の参入もあって急速に増えました。その結果、障害児の放課後の居場所がぐんと広がりました。しかし、参入してきたのはまじめに障害児の居場所づくりに取り組む事業所だけではありませんでした。

・大阪市では不正請求や虐待が判明

 大阪市大正区の事業所は実際のサービス量より多く障害児通所給付費を不正請求していたばかりか、児童発達支援管理責任者を置かず、職員らが障害児を虐待していたことが大阪市の監査で明らかになりました。

 大阪市は2016年、この事業所の指定を取り消し、加算額も含めた不正請求額約1,100万円の返還を求めました。こうした悪質例だけでなく、テレビを見せているだけだったり、ゲームを渡して遊ばせているだけだったりする事業所の情報も、厚労省や地方自治体に相次いで寄せられました。

・厚生省令などの改正で資格要件などを厳格化

 事態を重視した厚労省は2017年、厚生省令などを改正し、配置する職員の半数以上を保育士、児童指導員とするほか、児童発達支援管理責任者の資格要件に保育所などでの児童福祉経験、障害児・障害者の支援経験を追加するなど厳格化しました。

 それでも、2019年には京都市伏見区で児童発達支援管理責任者が不在のまま運営し、その分の給付費540万円を不正請求していた事業所が京都市に摘発され、受け入れ停止処分となったのに加え、埼玉県所沢市や千葉市若葉区の事業所が不正請求や虚偽報告などで指定取り消し処分を受けるなど、全国で放課後等デイサービスを舞台にした悪質事例が相次いで見つかっています。摘発されたのが氷山の一角とみられることもあり、厚労省はたびたび、運営基準の順守を求める通知を出すとともに、自治体に監査の強化を求めるなど対応に躍起です。

適正化と並行して居場所確保の推進が必要

 今後も放課後等デイサービスは増え続ける見込みです。悪質な事業所の排除は徹底して進めなければなりませんが、放課後等デイサービスへの期待は大きくなる一方です。運営の適正化と並行して障害児の居場所はこれからもどんどん確保していく必要がありそうです。

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