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名言で語る「日本の歴史」授業

15面記事

書評

高橋 茂樹 著
人物の生き方、事件の背景に迫る

 歴史の面白さを実感できる書である。
 評者が中学時代に学んだ歴史授業は、どちらかといえば知識重視であったように思うが、歴史上の人物の言葉や詠んだ歌等の話には聞き入った。その人物を身近に感じて、歴史そのものに興味が湧いたことを覚えている。
 著者は、公立の、主に中学校の社会科教員として三十数年間教壇に立ち、退職後も新任教員の指導に務めた社会科授業のベテランである。退職後、過去の自分の授業を振り返り、「架空の授業」を書き始めた。その一部「人物編」が本書である。
 第一章古代から、第五章現代まで、日本の歴史上の人物51人と、これらの人物が発した「名言や和歌」を、歴史的重大事件や出来事とつなげて記している。
 「なぜ」「どうして」こうした名言や和歌がその時、その人物から出てきたのか、それを探る中で、その人物の生き方や考え方、さらに背景まで学ぶことができる。
 また、それぞれの人物に関連した事柄が「豆知識」として付加されている。例えば、「壬申の乱の引き金となった歌?」「軟弱体質の室町幕府が約二四○年間も続いた不思議」「山県有朋と統帥権の独立」など、歴史を探究したくなる興味深い内容が満載である。
 学生や社会科教師をはじめ、広く大人が読んで楽しめる一冊である。
(1980円 黎明書房)
(谷 智子・高知市教育委員会委員)

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