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グリコードがさらに使いやすく プログラミング教育の全面実施に向けて学習キットを提供

10面記事

企画特集

「グリコード」の使い方を説明する井上昇教諭

子どもに身近なお菓子を教材に楽しく取り組む

 来年度に迫った小学校のプログラミング教育必修化。だが、全国の小学校では「どうやって教えたらいいのか」、「教材はどうするのか」といった課題も表面化している。こうした中、専門知識がない教員でも手軽に授業に活用でき、子どもの意欲を引き出す教材として注目されているのが、江崎グリコが提供しているプログラミング教材「GLICODE」(以下グリコード)だ。ここでは実際に授業で活用している様子や教員の評価から、その魅力を紹介する。(制作協力=江崎グリコ株式会社)
プログラミングの基本概念を学ぶ
似たステージを使い効果的な手順を考察
千葉県・柏市立大津ケ丘第一小学校

意欲的に学べる導入教材
 「プログラミングを楽しく学ぼう」―。井上昇教諭による「グリコード」プログラミング学習キットを使った授業が、4年生の総合的な学習の時間で行われた。「グリコード」は、子どもたちが大好きなポッキーをルールに従って並べ、カメラで撮影してコード化することで、キャラクター“ハグハグ”を女の子のもとまで導くアプリ。シンプルな操作で、誰でも楽しみながらプログラミングの基礎的な考えを学ぶことができるため、導入教材としてうってつけだ。
 今回、改修された学習キットでは、45分の授業に対応した指導案のもと、「シーケンス(順番に実行)」と「ループ(繰り返し)」という基本的な概念に触れ、感覚を養うことができるのが特長。難易度の異なる計12コースを用意しているため、初めてプログラミングを体験する子も、ステップアップしながら論理的思考力を育むことができる。しかも、実物のポッキーの代わりに使える教具キットや黒板に貼り付けられるマグネット教材なども付属し、学校現場での使い勝手がより一層向上した。

解けない場面を意図してつくり試行錯誤

1人で考えることから、教え合う学びへ
 授業は「ブログラミングって知っている?」と尋ねるところからスタート。スマートフォンやゲームといった子どもたちの声が響いたあと、「プログラミングによって動いているモノがあるか、考えてみよう」と、ワークシートを配布。一通り書き終えるのを見届けると、付属の学習冊子にある衛星やドローンの写真を映し、こうしたものにもプログラミングが使われていることを伝えた。
 その上で、「今日はそんなプログラミングについて楽しく学ぶために、ヒミツの道具を用意しました」と「グリコード」を紹介。興味たっぷりの表情を浮かべる子どもたちに向けて、黒板にポッキーのマグネット教材を貼りながら、分かりやすく操作手順を指導していった。
 この日は2~3人のグループで1台のタブレットを共有していたが、まずは一人ひとりが順番に「シークエンス」1―1の問題から挑戦。ポッキーを並べて撮影し、ハグハグが女の子のところまでたどり着くと「はなまる」が表示されるので、早く次の問題にトライしたくなるようだ。なお、多様なルートが選択できる最後の問題では、「グループで相談しながら、どんな方法があるか探してみよう」と呼びかけ、協働的な学びに発展させていった。
 続く「ループ」の問題に入る前に、井上教諭がその概念を理解させるために使ったのが、信号機の赤・黄・青は繰り返すことがプログラムされていることだった。「次の問題では7マス進むことが必要になりますが、ポッキーカードは6枚しかありません。こうした際、一定のプログラムを繰り返すことで指示を少なくできるのがループという方法です」と説明した。
 「グリコード」では、ポッキーカードをハの字に並べることでループの指示になる。子どもたちはそれぞれの用紙にポッキーカードを並べながら、「これだったら、絶対にクリアするから」、「ちがうよ、ここはポッキーを斜めにしないと」など口々にアドバイスしながら、ゴールに向かって試行錯誤を繰り返した。

ポッキーをどう並べれば意図した通りに進むのだろう?
自然と話し合う場面が生まれた。

座標の理解につながる可能性を示唆
 授業後、子どもたちに感想を聞くと「プログラミンクで動いているものが、身近にこんなにあることを知れてよかった」といった声がある一方で、「難しかったけど、楽しかった」と口にする子が多かった。「これは、手順を考えるには頭は使うけれど、指示した通りに動くことを楽しいと感じている証拠。何度失敗してもあきらめない、とても良い学びになっていると思います」と井上教諭。また、プログラミング的な思考を育むという面では「1―6と2―6という似たステージを、ループを使うことで少ない手順で目的の場所に辿りつけることに気づいてくれたら」と今日の授業のねらいを話した。
 さらに、こうしたプログラミング体験は、4年生・算数で習う「座標」の理解につながる可能性を示唆。「グリコードを実施した後のワークテストでは、点数が確実に上がっています。家庭でもアプリをダウンロードして活用できるので、今日の振り返りはもちろん、その先のイフ(場合分け)を使った問題にもチャレンジしてほしいですね」

プログラミング授業の下地づくりに「グリコード」を
 もう一人、「グリコード」をプログラミング授業で活用しているのが、柏市立十余二小学校の露木教諭だ。その魅力は、子どもが自然と意欲的になることで、ポッキーだからといって興味が変に逸れることなく、きちんとプログラミングとして考えて取り組めることだという。
 柏市では2017年度から市内全小学校でプログラミング教育を実施。必修化となる来年度は、4年「総合的な学習の時間」、5年「算数・図形における正多角形の作図」、6年「理科・物質・エネルギーの電気の利用」で取り組むことになるが、その下地づくりとして3年生で「グリコード」を活用する意向を持っている。
 「柏市では4年でScratchに取り組むことになり、他市の場合も5年・算数の図形では使うことになります。したがって、3~4年生のうちにプログラミンの基礎を学んでおく必要があり、それには手軽に体験できるグリコードがふさわしいと思います」と話す。しかも、「グリコード」は撮影するとき、「右にうごく」「上にうごく」など自分が指示した内容が画面に表示されるため、「インターフェースが似ているScratchへの接続がスムーズになります」と指摘した。
 初めてプログラミングを体験する子どもたちには、親しみや楽しさを感じてもらえる導入教材が不可欠だ。ゲーム感覚で学べる「グリコード」には、そんな魅力が詰まっている。

露木 新 柏市立十余二小学校教諭

「グリコード」プログラミング学習キットとは

「グリコード」は、創業以来、子どもたちの健やかな成長を願ってきた江崎グリコが、子どもたちのプログラミング教育の力になるために開発したプログラミング教材だ。2016年度の総務省「若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業」のもと、これまで複数の小学校で教育課程内での実証研究を行ってきた。
「グリコード」プログラミング学習キットは、こうした導入校や大学有識者の意見を参考に、学校現場でさらに使いやすくなるように開発されたもの。児童が授業で使用する「ポッキーカード」やカードを並べるシート、学習冊子を50名分同梱。また、教材の使い方や指導案がまとめられた教師用のマニュアル、ワークシート、マグネット教材がセットになっている。

グリコードをこう使いたい
高橋 純 東京学芸大学教育学講座准教授

はじめの一歩を踏み出すツールに
 小学校でのプログラミング教育は今回の学習指導要領から新しく盛り込まれる内容なので、まずは学校現場で多様な実践を積むことが重要だ。「グリコード」のようにプログラミングの基礎を学べるツールを活用して、論理的思考力を育てるプログラミング教育を体験することは、全面実施への備えとして有効だろう。学習キットでは子どもに身近なポッキーカードが全児童分用意され、低学年でも個人でプログラミングの手順を考えられる。Webサイトの充実も図られ、指導を手助けする動画や実際の授業映像などが紹介された。プログラミング教育に手軽に取り組めるようになっているので、最初の一歩を「グリコード」とともにはじめてはいかがだろうか。

西田 光昭 柏市教育委員会教育専門アドバイザー

教育カリキュラムへの位置づけも検討
 「グリコード」は、子どもたちに身近なポッキーというお菓子を使って、楽しみながら学べる点が魅力的だ。具体物を並べて考えるという活動を通じて、「シーケンス」や「ループ」といったプログラミングの基本的な概念に触れ、論理的思考力を高めることができる。ポッキーの向きで指示をつくって、カメラで撮るだけと操作が簡単なのも良い。柏市では3年前に作成したプログラミングモデル指導案をベースに、4年生以降でプログラミングに取り組んでいる。現在、実践事例をまとめてプログラミング教育スタンダードとして整理を行っている。4年生からの実践の準備として、3年生で「グリコード」を活用する事例も含めて,準備しているところだ。

Webサイトでは動画や指導案も提供
 学習キットの開発・提供にあわせてホームページもリニューアル。
 実際の授業や、授業や準備で使える動画、指導案などが紹介されています。
 https://cp.glico.jp/glicode/

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