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安心・安全な修学旅行の実施に向けて 日本旅行業協会がコロナ対策の「手引き」作成

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感染防止策は学校も協力を

 新型コロナウイルスの影響により修学旅行は延期や中止などの影響を受けている。最大の行事として楽しみにしている児童生徒も多く、探究型学習の機会として位置づけようとする学校もある。これからの修学旅行はどのように実施すればよいか、日本旅行業協会はこのほど旅行業者向けの国内修学旅行の手引きを公表した。営業担当者や添乗員だけでなく、教員や児童生徒、各施設の協力、また行程上の注意事項などコロナ対策の指針を示している。

 学校生活の思い出として児童生徒の印象に深く残る修学旅行は、学習指導要領の特別活動に位置付けられる教育活動のひとつだ。新型コロナウイルス感染症に対応した修学旅行の扱いとして、文科省は

 ・感染防止対策を最優先し学校設置者が適切に判断する
 ・教育的意義や児童生徒の心情等に配慮し中止ではなく、延期扱いなどの配慮をする
 ・中止、または延期した場合のキャンセル料等は一定の要件を満たせば国や自治体が支援

 ―などの考えを示している(「新型コロナウイルス感染症に対応した小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における教育活動の実施等に関するQ&Aの送付について」5月21日付事務連絡)。
 学校再開後、修学旅行を実施する際は、学校や設置者の適切な判断だけでなく、旅行業者との連携も重要になってくる。(一社)日本旅行業協会は6月3日、「旅行関連業における新型コロナウイルス対応ガイドラインに基づく国内修学旅行の手引き(第1版)」を公表した。
 観光庁や感染症専門医等の指導に基づく旅行業ガイドラインなどを参考に、(公財)日本修学旅行協会と(公財)全国修学旅行研究協会と協力して作成したもの。文科省は全国の教育委員会などに事務連絡を出し、同手引の活用と旅行事業者と連携を求めている。

関係者全員が予防策を
 同手引は、修学旅行のコロナ対策の考え方として次の3項目をあげる。

 (1) 飛沫感染と接触感染のそれぞれのリスクに応じた対策を検討
 (2) 飛沫感染は、換気の状況を考慮しつつ、人と人との距離をどの程度確保できるかなどを評価
 (3) 接触感染は、他者と共有する物品や手を触れる場所の頻度を特定し、対策を講じる。

 具体的な感染予防策として、

 ・団体行動中は距離を取り、会話を控える
 ・手洗いや消毒の頻度を増やす
 ・マスク着用の励行
 ・宿泊施設等の消毒と換気

 ―などを示した。
 営業担当者や添乗員向けの対策として、商談や事前の打ち合わせは可能な限り非対面形式をとり、業務中に体調不良、濃厚接触の恐れがある添乗員は勤務しない、などの対策を推奨。児童生徒、教職員向けには、出発前や旅行中の健康観察の徹底、手洗いや咳エチケットの事前指導などを求めている。旅程上の訪問先や、貸し切りバスや新幹線などの輸送機関を利用する上での対策についても触れた。

ガイドラインに従い体験活動も可能
 近年の修学旅行は見学や観覧だけでなく、体験学習プログラムや農業や漁業体験ができる民泊を利用するケースも多い。本社調査として本年2月21日から3月23日にかけて、全国の学校2400校(小学校1200校、中学校800校、高等学校400校に実施。340件の回答があり、回答率は14・2%)を対象に行った「修学旅行に関する調査」では、「修学旅行で、今後、活動を設定する際に配慮したいと考えていること」として、「直接体験を取り入れる」(184校)「伝統・文化の理解」(198校)「キャリア教育につながる活動」(148校)と、いずれも体験活動を想定した内容を希望する回答が多かった。
 「新学習指導要領における探究を意識したプログラム」についてたずねたところ、フィールドワークやホームステイ体験、現地での取材活動など、体験を前提としたプログラムを取り入れる学校もみられた(詳しくは1面)。
 手引では旅行業者が、各体験活動施設に、換気、定期的な消毒、手洗い・消毒設備の設置、従業員の指導・管理徹底などを事前に依頼する、民泊に関しては各民泊組織が作成するガイドラインに従い、安全で適切な体験を提供するよう求めている。
 学校側の感染防止策、そして旅行業者や関連施設のコロナ対策が適切に行われれば、修学旅行の実施、体験活動の実施は不可能ではない。日本旅行業協会では今回の手引きを、新型コロナの最新の知見などを踏まえて随時、見直しをする予定だという。

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