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【寄稿】学校教育支援~出前授業のすすめ~

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論説・コラム

 「NIKKYO WEB」に回を重ねて寄稿していただいているフリーライターの島崎由美子さん(フリーランスライター・障がい者スポーツ指導員・薬剤師)が日本で出前授業を始めた。コロナ禍前まではオランダで暮らすなど豊富な海外経験などについて語っているという。その模様をまとめてもらった。


島崎由美子さん

 未来を担う子どもたちに国際理解教育を通じて故郷の素晴らしさを伝えたい。収束の見えないコロナ渦、故郷を離れ30年間、米国、オランダ、スペインで生活してきた私は、子どもたちにそんな願いを込めて学校教育支援を様々な活動でサポートしています。

 その一環として、2021年1月より「出前授業」をスタートしました。海外のたくさんの国の魅力を子どもたちに楽しく伝えて、ふるさとの魅力を再発見させながら、大切な文化の継承を促しています。

 出前授業は面白いだけでなく、子どもたちの学習意欲が高まり、社会の一員として考えて行動を起こすきっかけとしても注目されています。ここでは、出前授業についての意義や子どもに与える授業の効果について紹介します。

 子どもの興味を引くような新しい教材を開発するには時間も予算もかかります。そのため、専門分野の人に委託できると学校側に大きなメリットがあります。

 また、いつもと違う子どもたちの様子がみられ、出前授業により子どもの行動が変化するかもしれません。

 学校でやっていることを外部の人から具体的に言ってもらえれば、授業内容に説得力が出て指導にも大きく役立ちます。なにより子どもからすると外部からいろいろな先生が来て勉強できるのは楽しい経験のひとつです。

 出前授業は企業にとってもメリットがあります。単に企業の好感度を上げたり、PRをしたりするためだけではありません。

 子どもに授業と社会とのつながりを理解してもらうことで、企業に必要な社会へ貢献の目的を果たしています。

 また、企業に興味を持ってもらえれば、その企業の次世代の人材育成にも繫がるでしょう。そのために出前授業を重視し、新入社員の新人教育として積極的に実施している会社もあるようです。

 出前授業はさまざまな業態の企業や専門家が様々なテーマで取り組んでいます。

 例えば、新聞の読み方や取材の仕方、見出しの付け方を学んで、新聞に興味を持ってもらえばそれだけ世の中に対する関心が強まります。

 授業の対象者に合わせて、社会や政治、環境問題、福祉、スポーツなどの様々なテーマで、国語、社会、総合などの学びを深めることができます。

 おもちゃのように子どもたちが興味を持ちやすい題材をテーマにして工作などのワークショップを行う出前授業や、クイズや制作を通して製造業の流れやみんながわかりやすいデザインとはどんなものか、環境に配慮するとはどんなことなのかなど、サスティナブルやデザイン、ものづくりの流れについて理解させることもできます。

 気持ちよい暮らしをするには自分や家の中を清潔にして健康に暮らすことが大切だということを学んだり、実際にものづくりの現場に立っている人から解説を受けたり、家庭、理科、道徳、社会などの勉強に役立つ理解を深めることも素晴らしいことです。

 外部講師による授業は子どもたちに新鮮な印象を与えますし、総合授業が得意でない先生もおられるでしょうから、出前授業は学校側にとってもメリットがあると思われます。

 しかしながら、出前授業を募集しても学校側の理解や協力が得られず、実際は応募校が少ないようです。出前授業を多くの学校で実施するためには、スタッフとしてボランティアを養成する必要があると思われ、地域がその役割を果たしていくことが期待されています。

 街づくりや個別の政策課題など、より社会性の高いものをテーマにすることは、子どもたちの関心が高まるだけでなく、少子高齢化地域において共生社会の成長にも繋がるなど、いろいろと複次的な効果が期待できることでしょう。

 本来の授業との連動で出前授業を確保するという工夫なども学校教育をさらに豊かにするはずです。

 また、出前授業の状況についてテレビや新聞で報道され、少子高齢化地域が広く紹介されることも嬉しいことですね。

 私自身は「限られた時間内にいかに分かりやすく伝えるか」といった点を重視して出前授業をしていましたが、続けている中で「どのようにして子どもたちに想いを言葉にして伝えるか」を重要視するようになりました。

 子どもたちを前にして、1人の大人としてどんな生き方を示せるか、どんな言葉を投げかけられるだろうかと考えれば、自分自身の未来や子どもたちの未来と向き合うことにもなります。

 出前授業で大切なのは、大人も一緒に考える機会にすること。より有意義な時間になるはずと感じつつ、私は国際理解をテーマにふるさとの魅力を再発見してもらったり、ふるさと文化の伝承がとても大切であることに関心を深めて欲しいと願っています。

 さらに、自ら考え、自ら判断し、自ら社会的に行動する、国際性豊かな魅力ある大人に育って欲しいと思いながら、継続して活動していきたいですね。

 空を見上げると、みなさんのふるさとは、世界とつながっています。


出前授業風景(1)ある小学校の2階ロビーにて


出前授業風景(2)家族を大切にするオランダの友達を紹介するね


出前授業風景(3)一つの国にいろんな国の人々が集まって暮らしているよ


出前授業風景(4)オランダになくてふるさとにあるもの探してみよう


出前授業風景(5)グループワークでは先生も一緒に考えましょう

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