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エネルギー環境教育プログラム「みんなでエネチャレ」 鼎談―国分寺市政策部×同教育委員会×東京ガス

7面記事

企画特集

左から關友矩学校教育担当課長、坂本たかし課長、鹿野陽子課長

 2023年10月、GX(グリーントランスフォーメーション)推進に関する包括連携協定を締結した国分寺市と東京ガス。翌24年には、東京ガスによる出前授業「みんなでエネチャレ」を市内の小学校で実施。この学びを通して家庭や地域が連携し、市民の脱炭素機運の醸成を試みている。同市が「みんなでエネチャレ」を導入した経緯や市民の行動変容への期待などについて、同市政策部政策経営課環境経営担当・坂本たかし課長、教育委員会教育部学校指導課・關(せき)友矩学校教育担当課長、東京ガス地域共創カンパニーカーボンニュートラルシティ推進部・鹿野(かの)陽子課長(以下敬称略)に、お話を伺った。

国分寺市内のCO2排出量の約半分が家庭から。市民の行動変容が最重要課題に

 坂本 国分寺市内のCO2排出量の約半分は家庭から出たもので、市内の主要な事業者にアプローチすればいいという話ではないのです。約6万世帯ある各家庭に脱炭素社会の取り組みをどう伝え、浸透させるのか。「国分寺市ゼロカーボン行動計画~オール国分寺で取り組む脱炭素社会~」策定の際のアンケートで分かったのは、小学生のお子さんを持つ親世代は多忙なこともあり、市からの働きかけが届きにくい、市報に載せた省エネ行動なども印象に残っていないということです。そういう課題が出てきたときに、提案されたのが「みんなでエネチャレ」(以下、エネチャレ)でした。

 鹿野 エネチャレは学校だけに終わらず、子どもが家族と話すことで家庭での主体的な省エネ行動が定着し、それが地域へと広がっていく。市民の脱炭素機運を盛り上げていく有効な取り組みになると思いました。

 坂本 「今日学校でこんな省エネ行動を教えてもらった」と、子どもが興味を持って面白いと思ったことなら家族に話すでしょう。このプログラムは日常の何げない行動でもCO2削減量が数値として「見える化」されていますから、些細なことも積み重なれば脱炭素社会へ貢献していると実感できます。国分寺市にとって市民全体の行動変容が何よりも重要課題なのです。

SDGs教育の推進を促す地域連携。全校でコミュニティスクール化を目指す

  教育委員会では脱炭素型ライフスタイルへの転換に向けてSDGsおよび環境教育の充実に取り組んでいます。また、地域と共にある学校として市内全校のコミュニティスクール化を目指しており、地域の方々の協力を得て教育活動を進め、地域連携の充実を図っています。

 鹿野 第十小学校で5年生3クラス合同のSDGs教育の授業を見学させていただきました。ゲストティーチャーも地元の東京経済大学の学生や環境ボランティアなど多種多様で、専門知識を伝えるだけでなく、地域と連携しながら児童の探究心を育てていくという思いが伝わってくる授業でした。エネチャレもエネルギーをテーマにしたSDGs7つ目のゴールに当てはめてくださって有難かったです。

  エネチャレは子どもの興味を引くように工夫されているし、専門知識を分かりやすく伝えているので、児童はもちろん教員にとってもより深い知識を学べる良い機会と捉えています。

市の現状に寄り添った出前授業。子から親へ、市民の行動を変えるエネチャレ

 鹿野 市役所庁舎におけるカーボンオフセット都市ガスの導入、平和の灯など市の取り組みとチャレンジも子どもたちに知ってもらいたいと、出前授業の中に取り入れました。すると、「平和の灯を知ってる!」との声が上がり、市と連携した取り組みが児童の興味を引いていることを実感しました。市がカーボンニュートラルに積極的に取り組んでいることを子どもたちを通して地域にも知ってもらうことは、市民の行動変容を促していく上でとても重要だと気付きました。そして、「お風呂の蓋を閉めるようになった」と子どもたちの実際の省エネ行動につながっていることを知ることも、市の政策推進パートナーとして脱炭素の取り組みを伴奏する私たちにとって大きな励みとなっています。

  教育委員会では令和7年度から第3次国分寺市教育ビジョンがスタートします。「SDGsに関する環境教育の充実」を取組項目の一つとしており、現代社会の諸課題を主体的に捉え、その解決に向けて、自分で考え、行動する力を育てていくものです。社会との関わりの中で学びを進めていくというのが重要な点で、エネチャレの出前授業は、社会の中で活躍する専門性のある方を講師としてお招きすることで、子どもたちは最新の技術や知識に触れ、体験的に学びを深めたりすることができる、大切な機会だと思います。出前授業を通して、子どもの学ぶ意欲が高まったり、環境教育の内容に理解が深まったりするなどの機会となることを期待しています。地球温暖化防止に向けて身近にできる行動を学び、日々の生活の中で確実に実践できるものを選択していく。市の目指すオール国分寺で取り組む脱炭素社会につながっていくと考えています。

 坂本 包括協定を結んだ中での一つの成果、結果だと認識しています。自治体が独力でエネチャレのようなソリューションプログラムを作れるだろうか。作れたところで、それをどうやって次世代を担う子どもたちや市民の間に広げていくのか。市内の学校にネットワークを持つ教育委員会の尽力がなければ、とても広がっていくものではないと思います。同じ目的を持って、オール国分寺で取り組んできた一つの成果が芽吹いたというか、行政と教育委員会、企業がゼロカーボンシティへという目標に向かってそれぞれが動いた結果だと思っています。

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