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コロナ禍でも豊かな献立を実現するために 学校給食での冷凍食品活用に向けた研修会

13面記事

企画特集

冷凍食品を使った献立を多数紹介

 厳しい衛生管理のもとに調理され、安全に活用できる冷凍食品は、作業時間の短縮や個包装提供などの面から学校給食の頼れる味方として注目を集めている。冷凍食品の正しい知識を持ち、活用法を知る「コロナ禍における学校給食での冷凍食品活用に向けた研修会 豊かな献立を実現するために」(主催=日本教育新聞社、共催=一般社団法人日本冷凍食品協会)が、3月13日(土)にオンラインで開催された。
 開会にあたり一般社団法人日本冷凍食品協会の木村均専務理事は、コロナ禍における学校運営の状況にふれ「学校給食関係者の力で、子どもたちの栄養、食事を守ることができたことに深く敬意を表したい。栄養に富み、豊かでおいしい給食を提供するために、また給食関係者のためにも冷凍食品が貢献できることを知ってほしい」とあいさつした。

基調講演
食育推進に果たす冷凍食品の役割
金田 雅代 元文部科学省学校給食調査官・女子栄養大学名誉教授

金田 雅代

少ない献立でも必要な栄養摂取を
 基調講演として、元文部科学省学校給食調査官で女子栄養大学名誉教授の金田雅代氏が「食育推進に果たす冷凍食品の役割」と題して講演した。金田氏は学校給食調査官時代に、腸管出血性大腸菌O―157食中毒事件が発生、学校給食衛生管理基準の作成にも携わった経験を持つ。学校給食のエキスパートの視点から、コロナ禍での学校給食の衛生管理の再確認と、豊かな献立提供のヒントとなる冷凍食品の活用について解説した。
 冒頭で、今回の新型コロナに関するこれまでの国の学校給食関連の対応が紹介された。2020年5月1日付の文科省通知「新型コロナウイルス感染症対策としての学校の臨時休業に係る学校運営上の工夫について」では、学校給食の工夫が具体的に示され、品数の少ない献立で適切な栄養摂取ができるようにすることや、弁当容器に盛り付けての提供が示されている。
 感染防止と栄養摂取を両立させるには栄養教諭の果たす役割が大きい。滋賀県彦根市の小学校では、栄養教諭と養護教諭が連携し、給食時の約束事を全校に周知。教職員に対しても、献立が1品少ないのは「配膳で密になるのを避けるため」と明確に伝えて感染予防を徹底しているという。
 静岡県の袋井市はコロナ対応給食方針を定め、野菜の和え物など配膳時にも感染の可能性のある献立は中止し、具だくさんの汁物など品数が少ない献立でも栄養を補える調理の工夫をしているという。

生きた教材づくりに欠かせない冷凍食品
 学校給食に使われる物資は地場産物や加工品など多岐にわたる。(公財)岐阜県学校給食会では安全性が高く、献立に取り入れやすく、取り扱いもよいとの理由から一次加工品の使用がここ数年増加している。一次加工とは、カットやむき、加熱など食材の性質を大幅に変えない加工を指す。冷凍食品もその一つで、冷凍豆腐や冷凍厚揚げの利用があった。
 自治体と生産者との連携や、給食設備技術の進化により物資の扱いも変化してきた現状を受け、金田氏は「冷凍食品を使うこと一つとっても、1食の望ましい食事を生きた教材として活用する役割が栄養教諭にはある。コロナ禍の間に、情報を集め、活用して食事内容の充実に努めていくべきだ」と、学校給食関係者に対してエールを送った。

金田氏が講演で提示した資料

金田氏が講演で提示した資料

実践事例発表
コロナ禍における学校給食での冷凍食品活用術
岩島 由美子 船橋市立坪井中学校学校栄養職員

岩島 由美子

自校式の会食形式からパック詰め給食に変更
 学校再開後の献立作成や提供の工夫は、実際どのように行われていたのだろうか。船橋市立坪井中学校の学校栄養職員である岩島由美子氏が、実践事例を発表した。
 千葉県船橋市は市内27の中学校に給食室とランチルームが整備され、調理業務の民間委託化、自校調理方式の完全給食を実施している。米飯またはパン・麺主食の2種類の給食と、弁当持参かを選べる「選択制給食」を採用し、全校生徒教職員が一同に会して喫食する方式をとる。
 各校に1名配置された栄養教諭・学校栄養職員が独自の献立を作成し、教員と生徒とが会話しながら食の指導ができる理想的な環境だが、新型コロナによる影響を考慮し、2020年6月から教室で食べるパック詰めの弁当形式の提供に切り替えた。

調理時間短縮と満足感を両立
 岩島氏は、勤務する坪井中学校で最初に提供した、パック詰め給食の献立をカラー写真で紹介。ご飯、春雨と生揚げのマーボー炒め、蒸しシュウマイ、中華きゅうりの4品に決めるまでには、作業工程や調理時間、それに見合う献立と食材を考え抜いたという。
 パック詰め給食の調理のポイントとして

 ・何分で詰められるかを逆算する
 ・調理後、冷ましてから詰めるため、煮物や炒めものの仕上がり時間を繰り上げる
 ・フライは衣付けが難しいため衣付き冷凍食品を活用する

 ―などを挙げた。
 この初回の献立では冷凍シュウマイを使用。その後もギョウザや春巻き、ハンバーグや肉団子などの冷凍食品を用いている。「冷凍食品のメリットは製作時間が短縮でき、他の調理に時間をかけることできる点」と岩島氏は指摘する。
 手作りの上海焼きそばと、冷凍ギョウザを利用した揚げギョウザを提供したところ、ボリューム感がアップし生徒に好評だった。調理員も冷凍食品を使うことで「作りやすい給食」となり、「密」にならない無理のない作業行程にもつながった。

規格書を熟読し問合せも
 岩島氏は、従来から魚やえび、コーンなど素材系の冷凍食品を利用してきた。今年度、多様な冷凍食品を取り入れた経験から、「規格書の熟読」が必須だと指摘する。アレルギー対応や解凍方法、価格などをトータルに考慮して決めているという。問合せ時のメーカーや卸事業者の丁寧な説明にも感心したという。
 同校の平均食数は630食に上る。日を追うごとに詰め方の効率化も進み、いろどりも献立もバラエティ豊かに進化している。栄養面や季節の内容を織り込んだ食育通信も発行を継続している。岩島氏は「生徒にとっては1個のお弁当であることを心に、今の経験を活かした給食作りをしていきたい」と締めくくった。

意見交換会
「黙食」の今だからできる学校給食の工夫や献立作成を


意見交換会の様子(左から金田氏、岩島氏、三浦氏)

 学校給食に冷凍食品を活用する際の疑問を解消するため、事前にセミナー参加者から募集した質問に答える形で、金田氏と岩島氏、日本冷凍食品協会広報部長の三浦佳子氏による意見交換会が行われた。

 ―食育の観点から冷凍食品を上手に活用するには

 金田 学校給食の食育は、一汁三菜の日本の食文化を1食の献立で実現することが重要です。冷凍食品を賢く使うことを栄養教諭や栄養職員は学ばなくてはいけません。坪井中学校でも一次加工品は以前から上手に使っていました。メーカーの皆さんには安全面やアレルギー対応を踏まえた商品開発をお願いしたいです。

 岩島 教室で「黙食」している生徒を、日々の給食で喜ばせたい。そのスタートラインに立つため安全性を考慮し、冷凍食品を活用しています。視覚、嗅覚、そして味覚を刺激する献立がポイントです。栄養教諭や栄養職員はぜひ、献立作成にもっと時間をかけてほしいです。献立で何を伝えたいかを考えれば、食育や食材選びのヒントが得られます。

 ―コロナ禍でも子ども達が喜ぶ、豊かな献立にするには

 金田 「今だからできること」に着目してもいいと思います。黙食は給食をしっかり見るチャンスになるし、よく噛む指導にもつなげられます。だからこそ、盛り付けを見たときの「おいしそう!」という反応が勝負。

 三浦 冷凍食品を献立に取り入れることで、時間や工程にゆとりができ、手作りや地産品が活きることも、岩島先生の実践から学びました。

 岩島 冷凍食品の商品規格書からは、多くの情報が得られるだけでなく、献立作成のアイデアも得られます。メーカーの方には問い合わせに対して丁寧に教えていただいた1年でした。

 三浦 メーカーと学校とが情報交換を続けることは、冷凍食品のバリエーションを豊かにすることにつながります。活用にお悩みの方は、積極的にお問合せしていただきたいと思います。

取組紹介
コロナ禍で活用度の高い商品を各冷凍食品メーカーが紹介

 冷凍食品メーカー等7社から担当者が登壇し、学校給食製品に対する取り組みポイントや、学校給食用商品、個包装などコロナ禍対応商品の紹介を行った。「学校給食実施基準」の改正でナトリウムの摂取量の引き下げが続いていることを受け、減塩対応食品の紹介も目立った。例年、対面形式で来場者が試食可能な形で実施していたが、今回はオンライン上でのプレゼンテーションとなった。

1 株式会社ニチレイフーズ
 学校給食向けに、着色料・化学調味料・香料不使用の「安心逸品シリーズ」を展開。
 「国産ミートのハンバーグ(Ca&Fe)」は、豚肉や鶏肉、たまねぎの主原料は国産原料を使用。100グラムあたり0・6グラムと食塩相当量にも配慮したのが特長だ。「アセロラゼリー」はレモン果汁の約34倍のビタミンCのほか、食物繊維と鉄分が摂れるカップデザート。SDGsを意識し、バイオマス原料を使用した包材を使う。5月12日の「アセロラの日」に合わせ、4~5月が販売のピークとなっている。

2 キユーピー株式会社
 冷凍食品分野では、業務用の卵製品を主力とする同社。学校給食向けには、凍結卵などの素材品から、スクランブルエッグや卵焼きなどの加工品を製造販売する。
 「凍結全卵(調理用)HVNo.3」は鶏卵のみで製造した殺菌全卵で、卵を割る手間が省ける。解凍後にホイッパーで滑らかに混ぜてから使うと、ふんわりした「かきたまスープ」が作れる。「スノーマン鶏そぼろと大豆のたまごやき」は、でんぷんを使わず、風味や食感をアップした。食塩相当量は100グラムあたり0・5グラム。サイズは2規格で学年に合わせて選べる。

3 テーブルマーク株式会社
 学校給食製品に対し、パンやデザートの個包装商品に注力。非接触で衛生面の良さに加え、お皿が不要で、洗浄にかかるコストも削減できる。他にもアレルゲン物質に配慮した製品や、国産原料、栄養素強化にも力を入れる。
 「食パン6枚切り(1枚包装)」 は自然解凍で提供が可能。規格違いで8枚切り2枚包装もある。「こっぺぱん」も同様で、70・90・110グラムの3規格を用意。学校再開後の簡易給食で導入し定番化した学校もある。いずれもグループ会社のベーカリー「サンジェルマン」と同じ工場で製造したパンを使用している。

4 株式会社ヤヨイサンフーズ
 業務用冷凍食品メーカーとして、学校給食製品は、「塩分に配慮」」「主原料は国産を使用」「アレルギー物質への配慮」「不足しがちな栄養素への配慮」の4点を重視した製造を行っている。 
 「国産鶏肉と豚肉のハンバーグSC(鉄・Ca)」は100グラムあたり0・48グラムと減塩しながらも、うまみや噛み応えを残したオリジナル商品。「焼き目付き国産肉餃子SC(鉄・Ca)」も40%減塩した商品だ。「まろやか国産さばの味噌煮」は、独自設定でレトルト処理を行うことで骨まで軟らかく加工した。甘めのみそだれで仕上げている。

5 日東ベスト株式会社
 アレルゲンに配慮した商品として、焼菓子とおかずを展開。コンタミを防ぐため専用工場で製造。塩分を考慮した薄味対応の商品も開発する。
 「フレンズクレープ(いちご)」は、原材料に卵・乳・小麦を使わないクレープ。個包装で自然解凍による提供が可能。「お米deガトーショコラ」「お米de国産りんごのタルト」は、鉄分や食物繊維が摂れる。「FMうす味国産鶏豚使用のHB(ハンバーグ)」「FMうす味野菜いろいろ肉団子」は、塩分に配慮したおかず商品。 素材品として「FMうす味肉団子」もある。

6 味の素冷凍食品株式会社
 学校給食に適した、卵・乳原料を使わない商品を紹介した。「焼ギョーザ(ニンニク抜き)」は、ニンニクは使わず、国産の肉と野菜を使用。時間が経っても皮が硬くなりにくく、焼き目付きで蒸すだけで提供できる。18グラムと24グラムの2サイズから選べる。
 個包装で衛生的なスイーツとして「カップスイーツ」の需要が高まっている。豆乳を使った定番の「プリン」「北海道かぼちゃプリン」のほか、ラ・フランスや日向夏、安納芋やふじりんごなど、生産者の顔が見える素材を用いた、カップゼリーやムースも開発に力を入れる。

7 株式会社名給
食材の総合販売を行う同社は、安全・安心を軸に国産素材を中心にした商品を取り扱う。なるべく添加物やアレルゲン物質を使用しない商品開発や、地産地消商品の開発も手掛ける。
 「冷凍ダイスゼリー(広島県産レモン)」のほか、姉妹品として「とちおとめゼリー」や「湘南ゴールドゼリー」など地産商品を生かしたゼリーを紹介した。「国産大豆使用カット油揚げ」は、専用工場で大豆から加工しコンタミを防止している。「学)とり肉団子 7・5グラム乳・卵抜き」は、栄養士の声から誕生したアレルギー対応のロングセラー商品となっている。

冷凍食品の4条件

1 前処理している
 利用者に代わり、新鮮な原料を洗浄、不可食部分を除去、調理や下ごしらえなどの前処理をしているため、捨てるところがなく、調理時間も短縮できる。

2 急速凍結している
 急速な凍結を実施することで、食品組織が壊れないため、品質(栄養、風味、食感)が変わらない。

3 適切に包装している
 利用者の手元に届くまで、細菌の汚染、乾燥、汚れ、形崩れを防ぎ品質を保持している。

4 製品の品温をマイナス18度以下で保管している
 生産直後から配送及び販売等の各段階において、品温を常に-18度以下に保持することで、作りたての美味しさを賞味期限まで保つことができる。また、腐敗の原因となる細菌が増殖することができないため、安全な食品と言える。

冷凍食品認定証マーク

 日本冷凍食品協会が定める認定基準をもとに審査を行い、適合した工場を「認定工場」としています。認定工場には、継続的な検査や指導が行われ、認定工場が生産する冷凍食品には「冷凍食品認定証マーク」を製品に付けることが認められています。

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冷食ONLINE

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 (一社)日本冷凍食品協会による、冷凍食品情報サイトです。料理家や管理栄養士による冷凍食品のアレンジや保存方法はもちろん、大学など食品研究に携わる専門家へのインタビューや南極料理人によるコラムなど、冷凍食品を楽しむコンテンツが充実しています。
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 日本冷凍食品協会では、学校給食関係者を対象に、冷凍食品に関する講演会や調理講習会を無料で実施しています。お問い合わせは、下記まで。

一般社団法人 日本冷凍食品協会
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 Tel:03-3541-3003(代) FAX:03-3541-3012
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 2021年は、「冷凍食品(100+1)周年」に当たります。

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