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大人の基準で考えない 熱中症を予防する指導のポイント

10面記事

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谷口英喜氏による作成スライド

 現在、学校管理下で進められている熱中症予防では、個々の学校・教員によって意識や対策にばらつきがあることが課題として指摘されている。そこで、済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜氏に、学校での熱中症予防に大切な水分補給やマスク着用での指導の仕方、応急措置のポイントについて聞いた。

谷口 英喜 済生会横浜市東部病院患者支援センター長

谷口 英喜 済生会横浜市東部病院患者支援センター長

いつでも水分補給できる環境に
 授業中の飲水を制限している学校もあるようですが、子どもは大人以上にこまめな水分補給が必要です。大人の基準に合わせて考えると不足しがちになり、1回に摂取できる量も少ないため、こまめに水分補給をすることが重要になります。ですから、授業中は机の上に水筒があり、外に出るときは水筒を持つなど、子どもがいつでも飲水できる環境を整えてあげることが大切になります。指導してほしいのは甘いものや塩辛いものをたくさん飲んではいけないことで、それ以外の制限は必要ありません。
 基本的に水分補給というのは食事と飲み物で半分ずつ摂ることになるので、3度の食事とおやつを摂っていれば、水やお茶で十分。ただし、運動して衣服を着替えたくなるような汗をかいた場合は、塩分の入った飲料を摂取してください。

口呼吸の子どもに負担が大きいマスク
 マスクについては、大人はつけていてもそれほど体温は上昇しませんが、子どもは体温調節機能が未熟のため、口呼吸でコントロールしています。胸郭の発達も未熟なため1回1回の呼吸も小さく回数で稼いでおり、酸素も取り込んで体温も口から放出していることから、口の働きが重要になる。そこを塞いでしまうのは辛い目に遭わせることになるので、特に運動中や暑い時期にマスクを着用したままでいることは危険なのです。
 また、集団登校では歩幅の小さい児童が一生懸命ついていこうとすると歩数が増し、それだけ息苦しくなり体温も上昇します。したがって、低学年の児童ほどマスクを着用すると負担があることを上級生に伝え、ふだんより余裕をもって登校できるようにしてあげたいですね。

学校での緊急対応に経口補水液を
 熱中症の応急措置では、暑さから逃がしてあげることが第一。次にからだを冷やすことですが、おでこを冷やすことは冷却効果に乏しく、太い血管のある首筋や脇の下などを冷やしてあげることが重要です。3番目は水分補給で、自分で摂取できないときは救急搬送する必要があります。水分補給の種類も、熱中症になった場合は塩分入りのものを。とりわけ熱中症の水分補給に一番効果的な経口補水液は、学校の保健室に確保しておくことが必要です。
 点滴と同じ速度でからだに吸収できる経口補水液は、熱中症の要因の1つとなる脱水症を効率よく改善する。つまり、学校で緊急対応ができるんです。しかし、どう有効かを理解していないと使用を躊躇してしまいがちです。だからこそ、学校全体で経口補水液の使い方・効果をきちんと理解しておくことが重要になります。
 熱中症の予防法はいろいろありますが、夜間はどうしても脱水気味になるため、水分補給にもなる朝食を必ず食べてから登校すること。それをしないと脱水状態で午前中の活動をしてしまうことになるからで、十分な睡眠とともに熱中症予防の基本になることを理解して、学校での指導に生かしてほしいと思います。

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