暑熱順化トレーニングのすすめ
10面記事
熱中症になりにくい体をつくるには、気温が上昇する前から軽い運動をして、適度な発汗を促しておく習慣を
夏が来る前に体を暑さに慣れさせる
人は運動などで体を動かすと、体内で熱が作られて体温が上昇する。体温が上がったときは汗をかくことや、体の表面から空気中に熱を逃がすことによって、体温を調節している。この温度調整がうまくできなくなり、体の中に熱がたまって体温が上昇するのが熱中症だ。
特に、体温調節機能が十分に発達していない子どもは、梅雨の合間の突然気温が上昇した日や蒸し暑い日などに体が対応することができず、熱中症を発症しやすい。そこで、学校において子どもたちに取り入れて欲しいのが、本格的な夏が到来する前から体を暑さに慣れさせる「暑熱順化トレーニング」だ。
個人差はあるが、体が暑さに慣れる「暑熱順化」には、数日から2週間程度かかる。トレーニングすることで、約3日後から徐々に効果が現れ、約1週間でほとんど順化されたといえる状態になるといわれている。「暑熱順化」がすすむと、発汗量や皮膚血流量が増加し、発汗による気化熱や体の表面から熱を逃がす熱放散がしやすくなる。また、汗に含まれる塩分が少なく、ナトリウムが失いにくくなることで、水分補給で回復するようになる。
無理のない範囲で汗をかく、トレーニングを
具体的なトレーニングの方法は、「やや暑い環境」で「ややきつい」と感じる程度の運動(ウォーキングやジョギング、サイクリングなど)を毎日30分ほど続けることだ。学校では短時間から始め、徐々に時間や活動量を増やしていったり、朝や夕方など涼しい時間帯を活用したりするのが望ましい。また、軽い筋トレやストレッチを週5回以上行ってもいいし、体力がない子どもには入浴でも効果があるのでお薦めしたい。その際は、40℃程度の湯船に汗をかくまで浸かるのがポイントだ。いずれにしても、無理のない範囲で汗をかくことが大切になる。
学校では、適切な水分補給指導も欠かせない。子どもたちにこまめに水分補給を摂ることの重要性を教えるとともに、飲むタイミングや適量を指導することが大事になる。同時に、暑い環境下での試合や練習時などはスポーツドリンクや経口補水液などで、自ら体内の塩分バランスを整えることも身に付けさせたい。
十分な睡眠と適切な食習慣も大事
さらに、十分な睡眠をとることで、暑さへの耐性を向上させる。加えて、朝食の欠食もNGだ。朝食を取ることは、栄養はもちろん、水分と塩分を補給していることになるからで、それを怠ると登校時には脱水気味になっている可能性がある。
その上で、日頃から栄養バランスのとれた食事に気をつけ、特に汗で失われるミネラルやビタミンを補う食材を積極的に摂取するよう指導すること。すなわち、「暑熱順化トレーニング」に加え、適切な食事、十分な睡眠をとる習慣を身に付けることで、暑さに対して負担なく過ごせるようになるのだ。