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学校における熱中症の「初期対処」とは

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日本医科大学武蔵小杉病院 神田 潤部長に聞く

 学校における熱中症の対策・対処では、日頃の「予防」だけでなく、子どもが実際に症状を示した際の「初期対処」が極めて重要になる。現場で迅速かつ適切に対応するために、教職員はどのような知識を備えておくべきか。日本医科大学武蔵小杉病院で救急・集中治療に携わる神田潤部長に、学校で求められる初期対応の要点を聞いた。

神田 潤 氏 日本医科大学武蔵小杉病院 集中治療科

初期対処で重要な「3段階アセスメント」

 学校からの熱中症搬送は「決して少なくない」と神田部長。運動会や部活動中だけでなく、通学中に気分不良を訴えるケースも見られる。発生傾向については「近年増えている印象はありますが、以前から一定数あり、熱中症は継続的に向き合うべき課題だと考えています」と強調する。
 学校で子どもに熱中症の症状が見られたときは「涼しい環境に移すこと」が最優先になるとし、可能であれば冷房の効いた室内へ速やかに避難させる。その上で、教職員に必ず行ってほしいのが、「意識(反応)があるか」「自力で水分を飲めるか」「水分を飲んで症状が改善したか」の3段階アセスメントだと指摘。「この3つのうち、1つでも不良があれば、救急要請や受診をためらうべきではありません。判断の遅れが重症化につながる可能性があるからです」と語る。

誤った対処を避ける冷却と補水はセットで考える

 現場で見られがちな誤りとしては、「とりあえず休ませるだけで体温を下げない対応」を挙げる。熱中症では高体温と脱水が並行して進むため、積極的な冷却と補水の両方が必要だからだ。また、「水が飲めないが眠れば治るだろう」という判断も危険だという。水分摂取の可否と摂取後の症状変化を必ず確認し、改善がなければ医療につなぐ必要がある。
 活動復帰についても慎重な姿勢が求められる。「一時的に落ち着いたからといって、すぐ練習に戻すのは危険です。症状が出た時点で、その日の活動は原則中止すべき」と訴える。
 加えて、水分補給についても科学的な理解を持つ必要があり、軽度から中等度の脱水症には、経口補水液(ORS)が有用だという。「小腸での水分吸収は、ブドウ糖とナトリウムの共輸送によって促進されるため、両者を含むORSは理にかなっています。世界保健機関(WHO)も下痢症に伴う脱水症患者への使用を推奨しており、本邦には脱水を伴う熱中症に関しても有用性が認められているORS(個別評価型病者用食品)が存在します」
 一方で、日常的には定期的な補水習慣が大事になる。「暑熱下では知らぬ間に脱水が進むため、体調が良いと感じていても水分・塩分の摂取を継続することが重要です。その意味でも、学校でのマイボトル携行と随時飲水は有意義な取り組みといえます」

過剰なくらいの姿勢で子どもを守る

 さらに、搬送中や受診待機中に時間の経過と水分摂取で状態が改善することは多いが、「病院に行かなくてもよかった」「病院に行ったのは無駄だった」と子どもに思わせないようにすることも大切と話す。そのためにも、「学校では現場判断で負荷を上げるのではなく、過剰と思われるくらいの安全策を遵守する姿勢が肝心です。また、抜本的な対策としては学校の活動計画を見直すことも同時に必要で、猛暑を前提とした活動制限はもとより、活動時間を朝や夕方にシフトするなどの工夫を積極的に取り入れて欲しいですね」と期待を寄せた。

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