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非認知能力 概念・測定と教育の可能性

21面記事

書評

小塩 真司 編著
15の心理特性、定義からワークまで

 教育の現場で大きな話題となっている「非認知能力」とは、一体どういったものなのか。どのように育成すればよいのか。
 本書では、「誠実性」「好奇心」「批判的思考」といった15種類の心理特性を取り上げ、各章において、それぞれ研究者が定義と基礎研究、介入研究、教育の可能性を論じている。260ページに及ぶ専門書で読み応えは十分であるが、研究者以外が読みこなすには、かなりの時間が必要となると思われる。
 そこで、現場の先生方へのお勧めとして、まずは「定義」を把握し、その後「教育の可能性」の節をじっくり読み進める方法を提案する。そこから、自校で育成したい心理特性を、あれもこれもではなく、「これ」と決めることで、集中した効果的な取り組みを進めることができるであろう。
 評者自身、興味深く感じた特性の一つとして「セルフ・コンパッション」が挙げられる。「セルフ・コンパッション」とは「失敗や傷ついた経験の後に、自分の感情をバランスよく受け入れ、その経験が他の人たちとも共通していることを認識し、自分に優しい気持ちを向けること」である。そこには、「自分をハグする」といった具体的なワークも示されており、大いに参考になる。
 ここに挙げられた15の心理特性の定義、育成の可能性と副作用など、現場で教育に携わる者として、しっかりと基礎から理解したい。
(2860円 北大路書房)
(重森 栄理・広島県教育委員会参与)

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