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目指すべき社会を等身大で考えた力作が1000作品超 日本大学 第3回高校生作文コンクール

11面記事

企画特集

最終審査会の様子

主催=日本大学
共催=日本教育新聞社

 高校生たちが自分の生き方や進路など将来について深く考え、職業観・勤労観を育み、学習意欲を向上させることを願って日本大学が企画する高校生作文コンクールは、今年3回目を迎えた。最終審査会は2021年12月13日、日本大学本部で行われ、個人賞、学校賞が決定した。

社会の中で生きる自分と向き合う

自分事として、あるべき社会をイメージ
 今回のテーマは「私たちが生きていく上で目指すべき社会のかたちとは」。募集活動は2021年7月5日より開始し、10月15日の締め切りまでに全国から1095作品が届いた。学校単位での応募数も46校に上る。
 コロナ禍で授業や学校行事に影響が出る環境下、高校生たちは、住んでいる地域から日本、世界へと視点を広げ、今後目指すべき社会のかたちを自分の言葉で綴った。
 最終選考会では、全国普通科高等学校長会事務局長・笹のぶえ氏、日本大学企画広報部長・内藤明典氏、日本教育新聞社代表取締役社長・小林幹長氏が、選考基準に基づいて選ばれた上位20作品の中から個人賞を選出した。
 最優秀賞である日本大学賞に輝いたのは、岡山県立岡山南高等学校・坂本美波さんの「発展途上国の出産について」。坂本さんの作品について内藤氏は、「論点にぶれがない。文意を裏づける調査データの数値が提示されていてわかりやく訴えている」、小林氏は「“命の大切さ”を材に世界の医療問題にも切り込んだ印象深い作品」と評価。
 審査委員長の笹氏は、「今回のテーマは、こんな社会になっていってほしいということをイメージしやすく書きやすかったよう。伝えたいことがすんなり入ってくる文章が多かった」と総評。「坂本さんの作品は、助産師になりたいこととそのための手順が書かれ、自己実現のためのキャリアプランまで踏み込んでいた。何より、日本だけではなく世界の医療の現状を知り、支援活動に取り組みたいという意思表明が光る」と講評した。

作文をキャリア形成の一助に
 2022年度からの新しい高等学校学習指導要領では、生徒が自分事として事象をとらえ、自ら課題を発見して掘り下げて学ぶ力を重視している。笹氏は、「今回の作文で高校生たちは、自分の興味関心を切り口に、目指すべき社会のかたちを考えた。募集段階で、そこに自分がどう関わっていくかというテーマの趣旨を伝えるひと工夫があれば、さらに受賞作品のようにキャリアプランまでしっかり踏み込んでもらえたのでは?」と提言。内藤氏は、「読みやすくわかりやすい作品が多い中、より思いが強く伝わる作品を選んだ。今後も学校現場のために、自分事として世の中を見つめる機会となる取り組みを広げていきたい」と締めくくった。
 優秀賞以下は次の通り。

優秀賞
 立田葵子さん(学習院女子高等科)
 三浦くるみさん(北海道札幌国際情報高等学校)

佳作
 小田島はなさん(岩手県立花巻北高等学校)
 君島未蘭さん(鎌倉女学院高等学校)
 塩川愛さん(盈進高等学校)
 山田知永子さん(私立駒込学園駒込高等学校)
 米田龍生さん(樹徳高等学校)

 総合ポイント上位3校までに贈られる学校賞には岡山県立岡山南高等学校、北海道札幌国際情報高等学校、宮崎日本大学高等学校が選ばれた。日本大学賞、学校賞には賞状・楯・副賞が、優秀賞、佳作には賞状・副賞が贈呈される。受賞作品は日本大学・日本教育新聞社等の刊行物・ホームページ等に掲載されている。

【受賞者インタビュー】

日本大学賞受賞


坂本 美波さん 岡山県立岡山南高等学校

 ―応募のきっかけ
 先生の勧めで挑戦しました。少しでも発展途上国の医療の現状を知る人が増えればという思いで書きました。

 ―受賞の感想
 受験勉強でたくさん読み書きをしたので、努力が報われとてもうれしい。文章を書くことがより好きになりました。

 ―今後の抱負
 患者さんに寄り添って支えられるよう正確な医療の知識や技能を身につけ、作文の内容を有言実行していきます。

学校賞


畝岡 睦実 岡山県立岡山南高等学校 教諭

 作文への取り組みで、生徒たちの価値観の変容を引き出し、自分事として社会的に課題に向き合う姿勢を育てることができたと実感しています。コンクールへの応募が、生徒たちのモチベーションアップにつながりました。


山内 章裕 北海道札幌国際情報高等学校 副校長

 日頃の学びや考えを表現するのにふさわしいテーマだと考えて応募しました。この受賞は、生徒たちがさらに学びを深める力になりました。今後も、学び、考え、意見交換しながらよりよい社会を実現する若い世代を育てていきたいです。


湯浅 昭二郎 宮崎日本大学高等学校教諭

 文章作成のプロセスの指導として活用できればという思いで応募しました。次年度以降も実施されるのであれば、進路指導における小論文指導や志望理由書作成につなげ、豊かな表現ができる生徒の育成に役立てていきたいです。

【日本大学賞 受賞作品】

発展途上国の出産について
 坂本 美波さん 岡山県立岡山南高等学校3年

 新たな生命を授かることは奇跡だ。だが、必ずしも全ての女性が安全に健康に赤ちゃんを出産できるとは限らない。それは発展途上国でも同じだ。しかし、高度な医療技術の提供ができる日本は、新生児や母体が危険な状態であっても、医療が充実しているため、多くの命を助けることができる。
 発展途上国とは、国民一人当たりの所得が先進国よりも低く、社会や発展が十分ではない国のことを指す。発展途上国では、出産時に母親や子供が同時に命を落としてしまう人が非常に多いことが問題になっている。世界では一年間で二十九万五千人の女性が妊娠、出産の際に命を落としている。つまり、一日で約八百人の女性が命を落としているということになる。そのうち九九%以上が発展途上国での出来事だ。しかし、そのほとんどが医療が充実してさえいれば、助けられた命であった。
 発展途上国で妊婦が亡くなってしまう原因は貧困問題だけでなく、医療格差、若年出産、保険サービスの未発達、感染症対策の遅れ、といった様々な問題によって死亡率は年々増加してきている。日本でも医療従事者は不足しているが、それ以上に発展途上国は人手不足の問題を抱えており、出産後に十分なケアのできる助産師や看護師がいない。そのため、助産師や看護師に付き添いをしてもらえず、医療の知識のない人が出産を手伝うことや、最悪な場合は一人で出産せざるを得ない現状が多くある。発展途上国の多くの若い女性達は学校に通うことができていない。それでは妊娠や出産について学ぶ機会はないだろう。だから、知識が全くないまま、妊娠、出産を繰り返す人が多い。そして、女性達は何らかの感染症にかかっていたとしても、それに気づくことができず、合併症を患ったまま放置し、出産し、母子ともに命を落としている。
 現在は、新型コロナウイルスの影響で今まで以上に死亡率が高まっている。妊婦がコロナに感染すると、重症化する可能性が高く、胎児の命にも影響する。世界のワクチン接種回数は累計四十五億回だが、発展途上国では一回目のワクチンを接種した人は、そのうち一%ほどである。日本では、ワクチンを打ちたいと意思表示をすれば、打つことは出来るが、発展途上国は資金力が乏しく、資金力のある先進国が先にワクチンを買い占めてしまい、ワクチンを手に入れることが非常に困難だ。ワクチンを打ちたいと思っても、打つことができない現状が発展途上国にはある。
 私は、将来、女性の力になれる助産師になりたい。女性にとって、妊娠、出産は人生のうちで、最も大切な時期の心の支えになるため、妊娠、出産についての知識を身に付けたい。発展途上国での出産の現状は、最悪な状態である。だから、日本の充実した医療での安全な出産だけでなく、医療が十分ではない中の、危険を伴う出産についての現状をより深く知りたいと思った。
 私が通う高校では、医療や福祉に触れる機会が多くある。看護師、助産師を目指している中で、日々自分にできることは何かを考えてきた。医療問題についてテレビや新聞を見ることはもちろん、実際に妊婦の食生活について調べ、研究をしている。将来、助産師になったとき発展途上国へのボランティアに参加し、多くの人を救いたいと考えている。小学校でユニセフの活動に取り組む事があったが、中学校、高校では全く行わなかった。調べただけで終わらないよう実際に行動できる人を今より増やすためには、幼い頃から日本だけでなく、世界の医療の現状や支援活動を知り、取り組み始めることが持続可能な社会への第一歩となるに違いない。

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