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子どもたちは音楽科授業にいかに参加しているか

17面記事

書評

知識と探究のマイクロ・エスノグラフィ
森 薫 著
実践コミュニティでの学びを分析

 小学校3年音楽科の1年間の授業を記録し、そこでどんな学びが生まれているかを、文化人類学の分野で開発されたエスノグラフィという研究手法の一つであるマイクロ・エスノグラフィでアプローチした。調査者が授業の中に身を置き、気付いたことをメモし、さらにビデオなどで記録を補完することによって、教室内の動きを詳細にテキスト化する。第6章「小学校音楽科授業のマイクロ・エスノグラフィ」がそれに当たる。
 注目したいのは、授業の中での「知識」や「学習」「音楽」とは何か、どう捉えるかという視座である。第1章「『正当化された真なる信念』としての知識から『保証づきの言明可能性』としての知識へ」、第2章「参加とその深まりとしての学習」、第3章「行為としての音楽」、第4章「行為としての音楽における知識」、第5章「音楽学習における多元的な知識の動態解明に向けて」で、これまでの「知識論」「学習論」「音楽論」を検証、捉え直す。
 著者が立脚したのは例えば、探究の理論を含むジョン・デューイの学習論。授業を教師による教授―学習モデルでは捉えず、実践のコミュニティへの参加と深まりを学習と定義する状況学習論から切り込み、授業前の音楽的営為、授業中の子ども同士が影響し合っての学びなどもきめ細かくすくい取っていく。
 音楽科にとどまらず、他の教科にとってもヒントになる視座を提供している。
(8800円 ミネルヴァ書房)
(矢)

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