日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

熱中症が起きた場合の対処法 症状に応じて適切かつ速やかな処置を

12面記事

企画特集

個人の条件や体調の状態を考慮する
 熱中症を防ぐには、個人の条件や個人の体調の状態を考慮することが大切になる。睡眠不足、発熱、下痢など体調が悪いと体温調節能力も低下し、熱中症につながるリスクが高くなる。また、学校で起きた熱中症死亡事故の7割は肥満傾向の人に起きているほか、体力の低い人、暑さに慣れていない人、筋肉のこむら返りなど熱中症の初期症状を起こしたことがある人は暑さに弱いので注意が必要だ。
 とりわけ部活を指導する顧問には、すぐに利用できる休憩場所を確保しておくことや、いつでも飲める冷たい飲料を準備しておくこと。加えて、スポーツの現場でよくある根性論を廃止し、日頃から体調不良を気軽に相談できる雰囲気づくりを徹底しておくことが、事故を未然に防ぐ上でのポイントといえる。
 また、皮膚からの熱の出入りには衣服が影響するため、暑い時は吸湿性や通気性のよい素材の服装を選ぶことや、帽子を着用して直射日光を防ぐようにすること。運動時に身につけるプロテクターや防具等の保護具は、休憩時には外すか、緩めるなどして体の熱を逃がすようにすることが大切だ。

プール活動でも熱中症対策を
 一方、学校のスポーツ活動の中でも意外と盲点になるのが、プールでの熱中症事故だ。プールサイドが高温になりがちなことや水中においても発汗・脱水があることに留意し、他の体育活動時と同様に熱中症予防を講じなければならない。
 事実、猛暑となった18年にはプールサイドの気温は優に40度を超え、水温も30度に達する日が多くなったことから、全国各地の小学校でプールの使用が中止された。屋外公営プールの開放基準では気温と水温との合計を65度未満に設定しているところもあるが、特に水温が中性水温(33~34度)より高い場合は、水中でじっとしていても体温が上がるため、危険とされている。
 対策としてはプール内に遮光ネットなどを張って日陰を作る。サンダルなどで児童生徒の足を守る。スポーツドリンクなどの飲料や、氷や保冷剤、冷却タオルなどを用意しておく。児童生徒を集合させる場所にはテントを設営するなどして直射日光を避ける。高温多湿になる更衣室を冷やしておくことなどがある。

具合が悪くなった場合の対処法
 児童生徒の具合が悪くなった場合には、教員が速やかに必要な処置をとることが極めて重要になる。スポーツ中なら、すぐに活動を止めて風通しのよい日陰や、クーラーが効いている室内に避難させること。
 その上で、水分を摂取できる状態であれば、冷やした水分と塩分を補給する。飲料としては、水分と塩分を適切に補給できる経口補水液やスポーツドリンクなどが有効だが、ない場合は食塩水(水1lに1~2gの食塩)を作って飲ませてもいい。ただし、水を飲むことができない、症状が重い、休んでも回復しない場合には医療機関に搬送する必要がある。
 さらに、応答が鈍い、言動がおかしいなど重症の熱中症が疑われるような症状がみられる場合には、直ちに医療機関に連絡すると同時に、現場でなるべく早く全身を冷やし、体温を下げることが重要となる。重症者を救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げることができるかにかかっているからだ。
 現場での身体冷却法としては、氷水に全身を浸して冷却する方法「氷水浴/冷水浴法」が最も体温低下率が高く、救命につながることが知られているが、必ず医療有資格者を配置する必要がある。学校現場ではそのような準備が難しいため、水道につないだホースで全身に水をかけ続ける「水道水散布法」が推奨されている。

軽症から重症までの具体的な症状
 熱中症の具体的な症状としては、

 重症度Ⅰ(軽症)では「意識がはっきりしている」「手足がしびれる」「めまい、立ちくらみがある」「筋肉のこむら返りがある」
 重症度Ⅱ(中等症)では「吐き気がする・吐く」「頭ががんがんする」「からだがだるい」「意識がなんとなくおかしい」
 重症度Ⅲ(重症)では「意識がない」「呼びかけに対して返事がおかしい」「からだがひきつる(けいれん)」「まっすぐ歩けない」「からだが熱い」

 ―といったことが挙げられる。

 したがって、学校ではこれらの症状について注意深く観察した上で、児童生徒に対して適切な対処を図ることが何より重要となる。すなわち、軽症では現場で対応して経過観察に努める。中等症では医療機関を受診。重症では救急車を呼び、到着までの間は積極的に冷却することが求められる。
 なお、身体を冷やすことは中等症時にも有効となる。たとえばぬれタオルなどで体を湿らせ、うちわや扇風機であおぐ。氷やアイスパック、冷えたペットボトルなどで首の付け根や脇の下、大ももの付け根に広く当てて、皮膚直下を流れている血液を冷やすことで症状の緩和に役立たせることができる。
 さらに、熱中症になった児童生徒には、医師の許可があるまでは運動を控えさせること。少なくとも退院後7日は運動を控えたのち、涼しい環境での運動から始め、2週間くらいかけて暑さに身体を慣らし、さらに2~4週間のトレーニングを経て、競技への完全復帰を行う準備期間が必要になる。軽症の熱中症の場合も、当日の復帰は見合わせ、1~2日様子をみてから再開するのが賢明といえる。
 いずれにしても、児童生徒にこのような症状が起こった場合は、発生原因の究明や、それまでの安全対策を検証した上で、再発防止に取り組むこと。あるいは、児童生徒の心のケアや保護者への充分な説明にも配慮する必要がある。

企画特集

連載