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学習指導案から補助教材まで、充実の内容で不慣れな先生も安心 授業に組み込みやすいJCDプログラミング教材

7面記事

企画特集

 2020年から必修となった小学校でのプログラミング教育。だが必修化から2年経った今も、プログラミング学習の指導に慣れていない教員は多く存在する。(株)JTBコミュニケーションデザインはそんな先生方をサポートするための教材を開発し、無償提供を始めた。同社の田中恭之氏と共同開発を担った(株)VILINGの中村一彰氏が、プログラミング教育の現状、教材開発の背景とメリットについて語り合った(以下、敬称略)。

(株)JTBコミュニケーションデザイン(JCD)コンテンツ事業局局長 田中恭之氏(左)と(株)VILING 代表取締役 中村一彰氏(右)

授業準備を省力化し、先生方の不安も払拭

 田中 かねてより、VILINGさんのプログラミング教育推進事業者としての実績、学校教育現場での長年の経験から、ぜひ協業したいと思っていました。おかげさまで、質の高いプログラミング教材が準備できたと思っています。

 中村 プログラミング教育の必修化で、プログラミングに詳しい先生も増えていますが、具体的に何をやればいいのか、授業にどう取り組めばいいのか、いまだに悩んでいる先生方が多くいらっしゃいます。

 田中 このJCDプログラミング教材の開発を始めたのは、2017年、小学校の新学習指導要領でプログラミング教育が導入されたのがきっかけです。当初から先生方の漠然とした不安をひしひしと感じていました。

 中村 これは、プログラミング学習が教科になっていないことが大きいですね。例えば5年生の算数「正多角形と円」という11時間の単元があります。ここでは11時間という授業計画の中の1時間を使ってプログラミングを指導しなくてはならない。コンパスと定規を使う従来の学習方法で子どもたちの理解を深めながら、どこでプログラミング学習を行うのが最も効果的かを見極め、授業の準備もしなくてはならないわけです。

 田中 先生方はとにかく忙しいですから、新しい取り組みに対する勉強とか準備に時間をかけたくても、なかなか時間が取れない。加えて2020年はコロナで休業する学校もあり、年間の授業時間が全然足りていない。いざプログラミング教育に取り組もうとしても難しいというのが現状だと思います。

 中村 現時点で積極的に取り組んでいるのは、全国の小学校の1割ほどではないでしょうか。ただ、文部科学省が打ち出した GIGAスクール構想によって、現場の先生方や校長先生、教育委員会もプログラミング教育に本腰を入れなくては、という機運が高まっています。

活用のメリットは

 中村 先月末にリリースしたJCDプログラミング教材は、小学1年生から6年生まで、

 (1) 学習指導案
 (2) 教員向け指導動画
 (3) 指導補助の副教材
 (4) 児童用動画

 ―の4つで構成されています。5年生の算数「正多角形と円」を例にとれば、(1)の学習指導案の中で単元のまとめを終えた後の発展学習として組み込んでいます。「プログラミングで正多角形をかく」をめあてとし、プログラミングソフト「Scratch(スクラッチ)」を使って「直線を引く」「○度向きを変える」などの方法を確認しながら正方形を描くプログラムを作っていきます。

 田中 スクラッチは、文科省の研修教材でも採用されているビジュアルプログラミング言語ですね。

 中村 テキストを使った一般的なプログラミング言語と違い、命令文が書かれたブロックを積み重ねながら視覚的に操作することができるので、授業にも取り入れやすいソフトです。スクラッチの具体的な操作方法や注意点は(2)の指導動画で解説しています。(3)の指導補助の副教材は、児童にスクラッチの操作方法をわかりやすく示すためのものです。(4)の児童用動画はスクラッチの基本操作と正方形を描くプログラムを途中まで教えて、その先は自分で考えたり、友だちや先生に相談したりして完成させる内容になっています。

 田中 小学校でプログラミング教育が導入されると初めて聞いたときは困惑しましたが、実際にスクラッチなどでプログラミングを体験してみると、これが楽しくてわかりやすい。プログラミング教育の目的は、プログラミングのノウハウを学ぶのではなく、プログラミングで養える「論理的に考える」「問題を解決する」「創造する」力を楽しみながら身に付けることだと実感しました。

 中村 このJCDプログラミング教材では、田中さんがご指摘されたように、プログラミングで養える力を楽しみながら身に付けることができます。従来の授業に組み込みやすく作られているので、準備の手間も省けますし、プログラミング学習の一歩目はこんな風にやればいいんだと、先生方の不安を払拭できるのが一番のメリットではないでしょうか。

 田中 そもそも当社がなぜプログラミング教材を開発したかと申しますと、これまで長年、修学旅行や教育旅行で親会社のJTBが、小学校及びその先生方に大変お世話になってきました。何とか恩返しができないかと考えた末、私どもが持つデジタルの解決能力を、プログラミング教材という形で活用できるのでは、と思ったわけです。

 中村 小学生対象の「プログラミングスタジアム」を始められたのも、そのような恩返しが背景にあったのですね。

 田中 先生方に寄り添うことをコンセプトにしたJCDプログラミング教材で、プログラミング指導の初めの一歩を踏み出す先生方のお手伝いをさせていただければ、こんなに嬉しいことはありません。今後、先生方のご意見を伺いながら、さらに質の高い、わかりやすい、そして楽しみながら学べる教材を作り上げていきたいと思っています。

 問い合わせ=(株)JTBコミュニケーションデザイン JCDプログラミング教材

プログラミング教育の着実な実施を助ける品質と効率のよさ
小林 祐紀 茨城大学准教授

 数年前に見られた小学校プログラミング教育への過熱気味ともいえた熱気は、随分と落ち着きを取り戻したように感じます。多くの自治体では、すでにモデル指導案等のモノの整備、そして教員研修というコトの実施を終えています。したがって、プログラミングは一定程度、小学校の教師に認知され、特に高学年においては教科書に記載されている学習内容を中心に授業が実施されているはずです。
 しかしながら、落ち着きを見せていることと、着実に実施されていることはイコールではありません。4月に実施された全国学力・学習状況調査において、プログラミングを扱った内容が出題されたことに焦りを感じた自治体・学校は少なくなかったと思われます。
 教材研究として、さまざまな事例を目にしたり、実際に体験したりすることは重要です。ただ現状を鑑みると、かけられる時間は極めて限られています。そのような中で、今回公開されたパッケージ教材の魅力は大きいと言えるでしょう。わかりやすく作られた児童用ワークシート、教師用授業ガイド(指導案)、そして何よりも授業の進行を支援してくれる動画教材及び教材研究に使用できる教師用動画教材が準備されていることで、限られた時間の中で効率よく準備することができます。そして質の高い授業へとつなげられます。
 今回の教材は、プログラミングの授業に苦手意識を感じる教師に限らず、授業づくりや授業展開に不安を感じる若手教師にもおすすめできます。さらには、これまでもプログラミングに取り組んできた教師が、自らの取り組みを見直すきっかけにもなると考えられます。つまり、プログラミングの授業の着実な水平展開に寄与することが期待できます。
 今後、ますます多様な教材群が登場することを心待ちにしています。また、これらの教材をヒントに触発された教師たちが、新しいプログラミングの授業を創造することを願ってやみません。

第2回「プログラミングスタジアム」作品募集中

 「誰でも楽しめるプログラミング」をコンセプトに、学年やスキルに関係なくエントリーできる小学生対象のプログラミングコンテスト。2回目の開催となる今年は、より多くの小学生が参加できるよう初心者向けの「夏休みの自由研究部門」と中上級者向けの「チャレンジ部門」の2部門で開催します。

開催概要

主催
 第2回「プログラミングスタジアム」実行委員会

後援
 デジタル庁

作品応募締切
 2022年9月2日(金)

応募資格
 ・応募時点で全国いずれかの小学校に在籍していること
 ・応募について保護者から同意を得ていること

プログラミング言語
 Scratch

 特設サイトURL=https://jcdpgstadium.jp/

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