日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

高レベル放射性廃棄物の地層処分をテーマに実践報告

7面記事

企画特集

原子力発電環境整備機構(NUMO)全国研修会開催

 次世代層が高レベル放射性廃棄物の地層処分への関心を持ち、「自分ごと」として捉えるための授業実践を報告・検討する研修会が、3月5日、東京の日本科学未来館で開かれた。原子力発電環境整備機構(NUMO)の主催で、全国のエネルギー・環境教育を推進する教員や教育研究団体からオンラインでの参加を含め、約170人が集い、実践報告と意見交換を行った。

エネルギー・環境問題を「自分ごと」に
政府の基本方針改定で高まる地層処分への関心

 冒頭のあいさつで同機構の近藤理事長は「NUMOは、高レベル放射性廃棄物の処分問題をテーマに授業実践を研究する教員や研究会を支援してきた。22年度は17団体、400人以上に上る。本日は全国の日頃の実践・研究の成果をご発表いただき、活発な討論が展開されることを期待したい」と述べた。

あいさつするNUMOの近藤駿介理事長

 分科会に先立ち、同機構が主催する「第4回私たちの未来のための提言コンテスト」の個人および学校表彰が行われた。「どうする?高レベル放射性廃棄物」をテーマに論文と動画で提言を募集したもので、今年度は22校から358点が寄せられた。
 「中学生・高校生・高専3年以下」の部門では晃華学園高校1年の増井美玲さんが、「高専4年以上、大学生、大学院生」の部門では宮崎大学1年の若松咲羅さんが最優秀賞を受賞。会場で提言のプレゼンテーションも披露した。


提言コンテストの受賞者

 続いて同機構の伊藤広報部長がエネルギー・環境教育に関わる情報提供を行った。ウクライナ情勢などエネルギー問題に関わる世界の動きを解説。政府が現在、高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の改定に取り組んでいることから、地層処分事業への社会の関心も高まりつつあることを指摘した。
 2013年度より始まったNUMOの教育支援事業の歩みを振り返り「高レベル放射性廃棄物の地層処分は学習指導要領にある主体的・対話的で深い学びにマッチするテーマ。ぜひ多くの先生方に取り組んでいただきたい」と述べた。

中学生による探究の発表も


各地の研究会による実践報告と意見交換が行われた

 研究・実践報告は2会場4セッションの分科会形式で行われた。報告数は14。コーディネーターの進行のもと会場からの質疑応答も活発だった。
 エネルギー環境教育研究会かこがわクラブは、中学1年社会科の実践を報告。地層処分問題について政府、専門家、処分場の住民、国民の4つの立場に分かれて意見交換させる授業を試みた。前後にはエネルギー新聞づくりや省エネのキャッチコピーを考える活動、NUMOによる出前授業などを取り入れ、様々な立場の意見を理解することや合意形成の難しさを実感させることができたという。
 沖縄エネルギー環境教育研究会からは、沖縄県立球陽中学サイエンス部の島絆さん(2年)と黒田麓人さん(1年)が、同校の波照間生子教諭と共に登壇。コンピューター上で3Dブロックを積み上げて自由に建築ができるゲーム「Minecraft(マインクラフト)」を使い、原子力発電所と高レベル放射性廃棄物の処分場を建築する活動を紹介した。現実に近い施設を仮想空間に作る中で地層処分についての理解が深まったという。


中学生による発表もあった

 札幌安全な処分を考える会は今年度設立されたばかり。平田文夫代表は小学校での教科横断型の指導計画を提案し「地層処分について“知る”から、“自分の意見を持つ”へ、授業のパラダイムを転換する必要がある」と訴えた。


教科横断型の報告が多くみられた

 分科会後は4人のコーディネーターによる各セッションの報告が行われた。山下宏文・京都教育大学教授は「全国の研究会同士が交流を深め、若手も含めた仲間を増やすことが授業実践の広がりにつながる。その際は地層処分の問題だけを考えるのではなく、原子力やエネルギー・環境教育全体の中で位置づけることが重要」とまとめた。


コーディネーターによるまとめ

企画特集

連載