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学校で戦争を教えるということ 社会科教育は何をなすべきか

12面記事

書評

角田 将士 著
実践の意義、授業プランを提示

 戦争と平和について、子どもたちにどう教えるか。本書では、社会科(高校では地理歴史科、公民科)こそが、そのために最も適した教科であるとして、その意義や課題とともに、小・中・高での授業づくりのポイントや授業プランなどを具体的に提示している。
 そもそも社会科は、戦後、「平和で民主的な国家及び社会の形成者」(教育基本法第一条)の育成を期して生まれた。社会的事象についての多面的・多角的な考察を通じ、認識を拡大・深化させ、自らの考えを構築していくというプロセスに極めて親和性が高い。
 一方で、政治的中立性という課題がある。著者は、授業で扱う戦争や平和についての多様な見解を「事実」として扱うことが大切であり、唯一解を教えるのではなく、子どもたちの認識を拡大・深化させるような「問い」として考察していくことが求められるとする。
 今日的な課題もある。かつては戦争を直接体験した人から話を聞くこともできたが、時がたつにつれ、そうした活動は難しくなっている。また、戦争の在り方自体が、国家同士の総力戦から多様なものへと変化している。
 それらを踏まえ、陥りがちなワンパターンの思考から脱却し、今の時代に対応した見方・考え方を獲得できるような授業づくりを目指すべきとの方向性は重要だし、これは実は大人の学びにも必要な視点だろう。
(2420円 学事出版)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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