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授業での効果的なICTの活用とは 「端末を使うこと」を目的としない新しい授業スタイルへ(2)

12面記事

ICT教育特集

デジタル教科書やプロジェクターなど場面に合わせて教具を活用する
(出典:「Here We Go!6年」学習者用デジタル教科書・光村図書出版株式会社)

昭和女子大学附属昭和小学校

 現在、小・中学校では、GIGAスクール構想により1人1台の端末の整備がほぼ完了し、高等学校においても令和6年度までに全学年で端末が整備される予定となっている。今後、学校現場では、どのようにICTを駆使して個別最適な学びを実現していくかが課題となる。今回は、ICTで英語を身に付けさせる工夫について、昭和女子大学附属昭和小学校の幡井理恵教諭に話を聞いた。

デジタルとアナログの併用で場面に合わせた活用を
日常生活の中から英語力を育む

英語のある環境に慣れる
 昭和女子大学附属昭和小学校(以下、昭和小学校)では全学年でiPadを使用。英語の授業は、タブレットを積極的に活用している。1、2年生は通常の英語の授業と、他教科の一部で英語学習と組み合わせて授業を進めるクリル(CLIL:Content and Language Integrated Learning)を導入するなど特色のある取り組みもしている。英語科主任の幡井理恵教諭に英語を身に付けさせる工夫と英語の授業でのICTの活用法、またデジタルと紙の教科書の併用の事例について聞いた。

タブレットの撮影や録音機能を活用して英語に触れる
 昭和小学校の1、2年生は図工、音楽、体育の授業のうち各1時間でクリルを取り入れている。例えば、体育では着替えの場面で英語科教諭が「Change your clothes」と声掛けし、着替えを促す。動きと英語を結びつけ、体を反応させる体験を積み重ねていくのだ。「低学年ではまずは日常生活の中に英語がある環境に慣れることから始めます。日本語と英語を切り替えても苦もなく対応できるので、さまざまな場面で英語を入れていきます」と幡井教諭。
 ICTを活用した英語の授業では、「Please find something circle」と呼び掛けると児童が教室の中にある丸いものを探し、タブレットで撮影。「clock」と声を録音するなど、タブレットの機能を活用して英語の言葉を対応させていく。
 高学年になると、ウェビング法や「ロイロノート」の「シンキングツール」などを使って、自分が語りたいことを考えてスライドにまとめるなど、さまざまな伝え方を体験する。

ICTで思考を途切れさせない工夫を
 6年生の英語の最初のユニットでは、クラスメイトや新しく入学した1年生に向けて自己紹介スライドを作り校内に掲示する活動を実施。まずは、紙ではなくタブレットでアイデア出しを行い、animal、sports、foodといった自分の好きな物などを入れたメモを作成していく。
 「ロイロノートの『シンキングツール』はアイデアをふくらませ、頭の中でわいた考えを可視化するのにとても便利です。自己紹介の書き方は短文でも単語1つでもよく、決まりはつくりません」と幡井教諭。「小学生の英語学習で憂慮すべきは英語の正確性を考えてしまって思考が途切れてしまうこと。英語の問いを英語で受け止めるトレーニングをすることが重要で、話すときにも事前に作成する『シンキングツール』がとても役立ちます」と話す。
 6年生の卒業時には、プレゼンテーション用のアプリ「Keynote」を用いて、学校の紹介ビデオを英語で作成している。英文を入れたり、校歌や、英語で話した自分の声を入れ込んだりするなど、タブレットを使えば多様な表現ができ、それぞれの英語レベルで楽しめる。「小学生は教具をどう使って何をどう学ぶかを母語レベルでしっかり考えられれば十分だと思っています。途中であきらめないようにファシリテートすることが教員の役目です」と幡井教諭は言う。

学習内容に合わせてデジタル教科書を活用
 昭和小学校では、光村図書(株)の紙の教科書と学習者用デジタル教科書を併用している。アイデアや答えの書き込み、動画視聴などはデジタル教科書を、単語を一覧で見るときなどは紙の教科書でといったように、使いやすさ、学習内容によって使い分けている。
 デジタル教科書は書いたり消したりするのが簡単なので、「間違ってもいいから書き込んでみる」という学習意欲につながる。個々の書き込みは個人にとどまらず、モニターなどにアップして、グループやクラスでの対話的な学びの場面や学習の振り返り活動に使うことができる。「児童はデジタル教科書を上手に使いこなしています。わからない単語をコピーして検索ツールで調べたり、聞き取れない単語は、速さを調整して繰り返し聞いたりなどして発音やリズムを習得しています」と幡井教諭は語る。
 幡井教諭は、ノートやタブレット、ホワイトボードやプロジェクターなどの教具を全体学習や個別学習の学習内容や学習場面に合わせて選んでいる。「『単語をたくさん言えるようになったのは、デジタル教科書や先生から英語をたくさん聞いたからだと思う』という感想が児童から出ています。インプットとアウトプットがうまくできるようデジタルとアナログをうまく切り替えながら利用し、積極的に学ぶ姿勢を育ててあげたいと思います」と幡井教諭は語った。


タブレットを使用し、個別に英文を聞いている様子
(出典:「Here We Go!6年」学習者用デジタル教科書・光村図書出版株式会社)

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