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避難者が快適で安全に過ごせる環境整備

12面記事

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学校体育館の空調設置とあわせて停電時の対策を

 大規模地震等の災害発生に備え、地域の防災拠点を担う学校体育館。しかし、避難者が一定期間生活する上で必要な空調整備はもとより、停電などライフラインが途絶えた際の対策も遅れており、一刻も早く防災機能の強化を進めていく必要がある。

体育館の空調設置が進まない~文科省が都道府県に対して防災機能の強化を求める通知を発出~

 学校施設は子どもたちの学習・生活の場であるとともに、災害時には地域住民の避難所等としての役割も果たすことから、その安全性の確保と防災機能を強化することが求められている。文科省の有識者会議による提言でも、備えるべき機能・施設の利用計画等を明確化し、ハードとソフトが一体となった整備を行うことが重要としている。
 こうした中、文科省は昨年12月時点での「避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査結果」を公表した。それによると、今回新たに調査項目にした、避難所に指定されている学校施設の「冷房機器設置率」は64・9%と、一見整備が進んでいるように感じる。
 しかし、一部屋でも使用できる冷房機があれば保有していると換算されるため、およそ正確な数値とはいえない。なぜなら、別の「公立学校施設の空調(冷房)設備の設置状況に係る調査」(昨年9月時点)では、避難所となる体育館の常設の空調設置率は15・3%にとどまっているからだ。
 このような実態も踏まえ、文科省は7月12日付で「避難所となる学校施設の防災機能強化の推進について」を、全国の都道府県教育委員会教育長宛に通知。本調査結果を防災担当部局等と共有した上で、避難所となる学校施設の防災機能の強化を一層推進するよう要請した。

避難所のライフラインが途絶した場合の対策~LPガスを備蓄し、動力確保やエネルギー源として活用~

 もう1つ、避難者が快適で安全に過ごすための空調整備では、災害によって電気やガスの供給が途絶した場合に、一定期間ライフラインを維持する対策も同時に進めていく必要がある。その中で、近年多くの自治体で導入され始めているのが、LPガスを備蓄しておき、動力確保やエネルギー源として活用する方法だ。
 この災害時に備えた避難所の取り組みについては、今年4月3日の参議院決算委員会でも取り上げられた。公明党の安江議員は、公立小中学校体育館への空調整備における岸田総理大臣への質問として、都市ガスとLPガス両方を動力とできるハイブリッド方式での導入について尋ねている。
 これを受けて岸田総理大臣は、体育館等における空調設備の設置を重要な課題と認識していると述べるとともに、「ご指摘の都市ガスとLPガスの両方を動力にできる空調設備は、災害時に都市ガスの供給が停止する恐れがある地域などにおいて、災害時に空調の動力源を確保するための1つの選択肢となる面があるとされていると承知しています。引き続き政府としては、災害時に避難所にもなる学校の体育館等について、自治体による空調設備の設置、これを支援してまいりたいと考えています」と答えている。

防災機能強化における自治体間の格差が広がっている

 学校施設の空調設置は、児童生徒の熱中症対策として緊急的に補正予算化された普通教室の整備をおおむね完了し、現在は体育館や武道場など屋内運動場への整備が当面の課題になっている。そこでは、平時における学校活動での熱中症予防対策とともに、災害時には避難者が生活することを念頭に、いわゆる“設備があるけれど使えない”という状況を防ぐ、二段構えの整備の在り方が必要になっている。
 同時に、今回の文科省における全国の都道府県教育長への通知は、自治体間によって防災機能の強化に格差が生じていることに対して、これを解消する目的もある。そのため、本通知では避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査結果と合わせて、学校の防災機能設備の保有状況を都道府県別でも掲載し、整備が遅れている自治体については迅速に対策を図るよう求めているのだ。

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