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変動する総合・探究学習 欧米と日本 歴史と現在

14面記事

書評

伊藤 実歩子 編著
各国の動向から可能性を問い直す

 教育課程に「総合的な学習の時間」が加えられたのは平成10年告示の学習指導要領。教科の枠を超えた横断的・総合的な学習を各学校が創意工夫を生かして実施することとなって四半世紀となる。例示を参考にしながら自校のカリキュラムづくりを行っているが、学校によっては教科学習が重視され、「総合的な学習」の趣旨を十分に生かし切れていない実態もある。
 Society5・0を見据え、未来社会を生きる子どもたちに必要な資質・能力を考えると、「総合的な学習」を充実しなければならない。
 本書では、日本における合科・総合の実践の歴史とともに、アメリカやスウェーデンなど欧米諸国の教科横断型、テーマ学習、探究学習などの経緯や現在について、11人の気鋭の研究者がリポート。いずれも、近代化の進展とともに、学問の内容重視か経験重視か、教科分立のカリキュラムか統合かなど、変動し続けており、総合・探究学習の成果を大学進学の資格試験に反映している国もある。
 日本とは歴史的な背景等が異なるが、これからの子どもたちに何を育てていくかを考える参考になる。コミュニティーと関わるサービス・ラーニング、労働との交流学習、哲学教育、職業教育などの実践から、「総合的な学習(高校は「探究」)の時間」の可能性が見えてきて、カリキュラム開発が楽しくなるのではないだろうか。
(2420円 大修館書店)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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