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今年の冬に警戒したい感染症の動向

9面記事

企画特集

コロナ禍対策の余波で免疫力が低下している

重症化や後遺症を抑える、感染前のワクチン接種

 新型コロナウイルスの出現は、学校の感染症予防における意識を大きく変える出来事となった。しかし、今後も季節ごとにさまざまな感染症が流行することが予想される中で、教職員や子どもの負担を軽減する新たな環境衛生対策を講じていく必要が生まれている。そこで、今年の冬に警戒される感染症の動向を整理するとともに、学校現場での感染症予防対策として必要な備えを紹介する。

免疫力の低下で感染リスクが高まる

 学校現場では、コロナ禍によりマスクの着用や手指消毒の徹底、換気など、3密回避が日常化し、これまでになかった衛生関連機器・用品も導入して積極的に活用するようになるなど、環境衛生への取り組みが大きく前進した。何より、教育活動そのものを継続することができなくなるという危機感が、学校の感染症予防に対する意識を変える引き金となったといえる。
 それでも、今後も警戒をゆるめることなく、継続的かつ効果的な感染症予防対策を図っていかなければならない。なぜなら、現実には新型コロナウイルス感染症は第5類移行後の今年の夏も「第9波」が起きており、子どもの間ではヘルパンギーナやRSウイルスといった感染症も流行。猛暑による熱中症患者の増加とも重なり、医療機関や救急搬送がひっ迫する地域が数多く出たからだ。加えて、夏季のプール利用などで子どもに流行するケースが多い「咽頭結膜熱(プール熱)」が過去10年で最多の感染者を出しており、いまだ上昇傾向の渦中にある。
 今年の夏に子どもの感染症罹患が例年よりも増えた理由にはいくつかの要因が考えられるが、ここ数年間のコロナ禍対策でほとんどの子どもが風邪を引かずに成長してきたため、体内の抗体が少なくなっていることが有力とされている。それゆえ、再流行した場合には感染者が大幅に増えてしまう恐れがあるのだ。
 例えば、近年では小学生以上でもかかることが多くなっているRSウイルス感染症は、本来冬に流行することが多いが、今年は夏に流行した。これは、冬の時期に感染しなかった子どもたちが、手洗いやマスクの着用などの感染対策のゆるんだ夏に集団行動を始めたことで一気に感染が広がったと推測されている。つまり、意外なところでコロナ禍の衛生対策が進んだことによる余波が起きているのだ。

例年より早いインフルエンザの流行

 同じく、免疫力になる抗体の保有割合が全年齢で低下傾向で、今年の冬に流行する可能性が高いとされているのが季節性インフルエンザといえる。インフルエンザは新型コロナウイルスの出現による感染対策が功を奏したか、日本では2020年以降は大きな流行を引き起こしていない。昨年の冬も新型コロナウイルスとの同時流行が懸念されたが、感染爆発というほどの流行には至らなかった。
 しかし、活動制限がなくなり、人の往来が盛んになった今年は様相が変わってきている。事実、9月に入ってからじわじわと感染者が増え続け、10月初旬には全国で1医療機関に受診した患者数は10人に迫るなど警報級になっており、すでに全国での学級閉鎖数は2千校を超えている。この時期にこれだけの数の学級閉鎖が余儀なくされるのは極めてまれなことだ。今後も若い人から高齢者に感染が広がることで流行の規模が大きくなることが予想されているとともに、例年よりも早く本格的な流行時期を迎える可能性が高まっている。
 こうした根拠としては、日本とは季節が逆のオーストラリアで今年、インフルエンザの感染拡大が例年より早く進んだことが挙げられる。インフルエンザは冬の南半球で流行したウイルスが、日本で冬に流行することがわかっているため、日本でも通常は年末年始に流行のピークを迎えるが、今年は12月上旬にはピークを迎えると予測する専門家が多い。
 また、日本では今年に入って一度もインフルエンザが終息していないが、同様の経緯があったアメリカでは昨年の冬に大流行しており、より一層警戒していく必要があるのだ。

重症化を抑える予防接種

 インフルエンザは約1~2日間の潜伏期間の後、突然38℃を超える高熱や関節痛、全身の筋肉痛などの重い症状があらわれるのが特徴。ウイルスの感染力が強く、爆発的な流行を引き起こすため、集団生活の場となる学校では一人が罹患すると次々に感染し、学級・学年閉鎖に追い込まれるケースが多い。感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」が主になることから、新型コロナウイルス予防と同様に咳エチケットや手洗い、マスクの着用を徹底するとともに、ドアノブやスイッチといった人の手がよく触れる場所の消毒が大切になる。
 インフルエンザで注意したいのは、通常は発症から一週間程度で症状が軽減するが、抵抗力の弱い子どもや呼吸器系に基礎疾患のある人は症状が重篤になりやすく、気管支炎や肺炎、まれに急性脳症まで発症する恐れがあることだ。しかも、現時点において日本で流行しているインフルエンザウイルスはA型で、高熱、倦怠感などの症状が強くあらわれるのが特徴だ。
 したがって、特に子どもにはインフルエンザにかかってしまったときの重症化を抑える予防接種が重要になるが、新型コロナウイルスの流行以降は接種率が低下しているのが実態だ。それゆえ、10月10日には武見厚生労働大臣が、新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行に備えて、重症化しやすい人は早めにワクチンを接種するよう呼びかけた。
 学校でも家庭に対し、かからないように予防することも大切だが、かかってしまったときに重症化させない備えも同じように大切になることを伝え、なるべく早期のワクチン接種を促していくことが望まれる。

新型コロナはこの冬に再び感染拡大も

 一方、新型コロナウイルスの「第9波」となった流行は、第5類移行後の5月途中から徐々に増え始め、9月上旬にピークに達した後は減少傾向で推移している。新規感染者数の全数把握が無くなり、感染しても病院で治療を受けない人も増えているため感染者の実数は定かではないが、今年1月頃の「第8波」よりも感染者数が増えたと推計されている県もある。
 ただし、ピークアウトしたとはいえ、ウイルスの持続力が高まる冬季には再び感染が広がる可能性が高いと予想されている。すなわち、インフルエンザとの同時流行がこの夏以上にまん延すれば、さらなる医療機関のひっ迫を招く恐れがある。加えて、現在の日本では新型コロナウイルス流行以降、種々の感染症の減少により、咳止め薬や去痰薬など医療品の供給量が減少する中で、在庫不足が深刻化する病院も現れている。となれば、この冬は自分の身を守るための体調管理や予防対策がより一層重要になるといえる。
 なお、新型コロナウイルスは今年の春からオミクロン株の亜系統となる「XBB」系統が主流になっている。他の亜系統よりも感染が広がりやすいほか、ワクチンなどによる免疫を逃避する傾向もみられるという。

感染者の低年齢化が進む

 こうした中で、9月20日からは「XBB」系統に対応するワクチンの接種が始まっている。新型コロナウイルスは、インフルエンザに比べて後遺症や罹患後症状が後まで続きやすいのが特性で、海外のデータではオミクロン株による後遺症発現率は4・5%と、約20人に1人は倦怠感、微熱、頭痛、呼吸困難、長引く咳、嗅覚・味覚障害などの後遺症に悩んでいることが報告されている。その意味でも、感染前にワクチン接種していると、後遺症の発症リスクを半減させるといった英国健康安全保障庁の研究報告もあり、重症化を抑制する以外にも効果が示されている。しかも、「第9波」では10代から10歳未満の感染者が多く、低年齢化していった状況もあり、感染前の接種かつ少児からの切れ目のないワクチン接種が大切になっている。
 また、すでに感染したからといってワクチンを接種しない理由にはならない。なぜなら、自然に感染するよりもワクチン接種の方が新型コロナウイルスに対する血中の抗体価が高くなるからで、厚生労働省も感染者に対するワクチン接種を推奨している。

感染予防の継続+新たな備えが大切

 コロナ禍の感染対策が進んだことで、種々の感染症が抑制されてきた。だが、隙を見せればそうした感染症が首をもたげることになり、それが従来冬にしか流行しなかった感染症が季節を問わず発症する要因にもなっている。いわば、感染症との戦いはイタチごっこのようなもので、ある年齢での一定程度の感染は必要悪なのかもしれない。だからこそ、肝心なのは爆発的な感染拡大を防ぐことだ。したがって、学校ではこれまで通りの感染対策を継続していくことと同時に、室内の乾燥を防ぐ加湿器やウイルス除去できる新たな感染予防機器なども導入し、教職員や子どもの負担を少しでも軽減していくことが望まれる。
 さらに、冬季はノロウイルスなどの感染性胃腸炎による集団感染にも注意が必要だ。下痢やおう吐によって脱水症を引き起こす可能性が高くなるため、「飲む点滴」といわれる軽度から中等度の脱水症における水と電解質の補給方法として適した経口補水液を常備したり、二次感染を防ぐ汚物処理キットを用意したりしておくなどの準備も大切になる。

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