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国語科授業で実現する「探究」深い問い・対話・批判的思考・創造的思考

16面記事

書評

酒井 雅子 著
テキスト読解に終始しない実践のヒント

 まえがきで著者は、学びの目的を「文章の意味を省察すること。その向こうの目的は、学びで得た探究心や探究法を、生きることで出合う社会への疑問、自分への疑問、そして、学問への疑問の文脈に応用すること」と定義する。このためにクリティカル・シンキングが必要だと説き、具体的なスキルを示して実践にヒントを与えている。
 各論では、説明的文章と文学的文章に分けて論じている。例えば、文学的文章の場合、共通教材としてよく知られている「ごんぎつね」(小4)のごんが鉄砲で撃たれた最期の場面の解釈を取り上げている。この場面一つ取り上げるだけで、子どもの読みが二つに分かれ授業が深まることを、評者も自分の実践で確かめている。
 特に面白く読めたのは、5章の中の「類比で解決策を探る」節で、現実のホームレスの問題と、名作「怒りの葡萄」の作中の移動農民オーキーのように、心身が荒廃している人々の問題を比べ、共通点と相違点をどう捉えるか、そしてその解決策を探究する授業例(高校)である。文学の読み自体を授業の目的にはせず、文学の力を借りて社会の在り方を考えさせる内容だ。探究する姿が教科書のテキストだけに終わっていない。
 いずれにしろ、テキスト内の読解に終始しがちな現代の授業に対し、大きな問題を提起していることに注目したい。
(2376円 明治図書出版)
(庭野 三省・元公立小学校校長)

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