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コロナ余波で季節を問わず流行する感染症

13面記事

企画特集

教職員や子どもに負担をかけない環境衛生対策を

 新型コロナウイルス感染症の出現以降、学校では3密回避などを徹底し、例年なら冬季に流行するはずの感染症も防いできた。しかし、活動制限が緩和された昨年の夏には、子どもたちの間でヘルパンギーナやRSウイルス、咽頭結膜熱(プール熱)などが流行。インフルエンザも例年より早く秋口から流行期を迎えるなど、今後もさまざまな感染症が季節を問わず流行することが予想されている。本特集では、その中で学校に求められる継続的な感染症予防に役立つ情報とともに、最新の衛生関連機器・用品を紹介する。

感染予防意識が低下

 学校における新型コロナウイルス予防は、5類へ移行後も、家庭との連携による児童生徒の健康状態の把握、 適切な換気の確保、手指衛生等の指導といった日常の対策を引き続き続けていくことが必要になっている。その一方で、これまで制限されてきた教育活動については、必要性を踏まえて積極的に実施していくことが求められている。つまり、重症化率の少ない若者には必要な感染対策を図った上で、本来の学校教育のあるべき姿を取り戻していこうというのがアフターコロナでの考え方だ。
 ただし、さすがに3年以上経過したコロナ禍における慢性的な疲弊や警戒心の薄れはいかんともしがたく、毎朝の検温といった健康状態の観察がおろそかになっている家庭・学校も多くなり、子どもたちの予防意識も低下しているのが実態だ。
 こうした状況の中で、集団感染リスクの高い学校現場に求められるのは、学年・学校閉鎖を招くような爆発的な感染を阻止することにほかならない。そのためにも、室内の乾燥を防ぐ加湿器やウイルス除去できる衛生関連機器・用品を導入し、教職員や子どもの負担を少しでも軽減していくことが望まれる。

換気対策設備の積極的な導入を

 このため文科省では、22年10月にエアロゾル感染を防ぐ、教室の空気の流れをつくる換気対策設備の促進を全国の教育委員会に要請。翌年3月には日本学校保健会が作成した「学校における感染症対策実践事例集」に基づく効果的な換気方法等をあらためて周知している。しかし、いまだサーキュレーターやCO2モニターの備えが不十分であり、この3年間の知見に基づいた対策が施されているとはいえない。
 教室などの室内で感染リスクを下げるためには、室内の二酸化炭素含有率を1000ppm相当に維持することが望ましいが、その目安を知るために必要なCO2モニター装置が1台以上設置されている公立学校は約5割、全教室に設置は2割ほどしかない。加えて、教室内の換気を補助するサーキュレーターも同じような設置状況となっているほか、HEPAフィルター付空気清浄機を備えている公立学校も4割に満たない。これらの機器は「学校等における感染症対策等支援事業」による補助対象となっているとともに、来年度の概算要求で「換気対策⽀援事業」として新規予算化している。加えて、全熱交換機などの高性能換気設備の導入は「学校施設環境改善交付金」が活用できるため、ぜひ積極的な導入を図ってほしい。
 また、空気がこもりやすい体育館での集団活動でも換気は必要だ。熱中症対策として導入されている大型扇風機などを使って、適切な換気を心がけたい。今回の能登半島地震において避難所となった体育館では、被災者が生活する中で新型コロナウイルスやインフルエンザがまん延した事例が数多く見られるなど、防災機能の強化という面でも換気設備の充実は欠かせない。

コロナ禍の余波で流行する感染症

 学校が引き続き感染症予防に努めなければならない理由は、活動制限が明けて以降、多くの感染症が流行していることもある。コロナ禍における環境衛生への向上は、新型コロナウイルス以外の種々の感染症も防ぐ効果があった。だが、そのぶん子どもの免疫力になる抗体の保有割合が低下しており、集団行動をする機会が復活したことで感染が一気に広がったと推測できる。
 例えば過去3年間、大きな流行を引き起こしてこなかったインフルエンザは、例年より早い秋口から感染者が広がりだし、年を跨いで流行。すでに累計で休校数は1千4百件に達し、学級閉鎖数も5万件を超えた。2月に入ってB型の感染例が増えたことで再び上昇しており、いつ感染拡大のピークを迎えるのか予断を許さない状況が続いている。
 子どもの咽頭炎の3割近くを占める「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」の感染者数も上昇中だ。症状がある人の分泌物が、鼻やのどの粘膜へ接触することで感染し、普通は春先から初夏が比較的感染者数の多い時期にあたるため、今後も注意が必要となる。そのほか、みずぼうそうや手足口病も増加傾向にある。
 冬季はノロウイルスなどの感染性胃腸炎にも注意が必要な時期になる。今シーズンも1月末時点で保育所358件、幼稚園9件、小中高校24件が報告されており、2月初旬には和歌山県内の保育所とこども園で115人が集団感染した。

新型コロナのワクチン接種が有料に

 一方、新型コロナウイルスは昨年の12月以降から新規感染者が増え始め、厚生労働省の2月9日の発表では、11週連続して増加傾向にある。その中で、能登半島地震で被災した石川県の感染者数が全国最多を記録。避難所では、断水で手洗いなどが限られる中で衛生環境を維持する難しさが浮き彫りになっている。
 これまではオミクロン株から派生した「XBB」系統が主流だったが、今年の1月中旬には新たな変異株である「JN.1」に置き換わったと見られている。症状は、発熱・咳・のどの痛みで従来と変わりはないが、感染力は強くなっており、免疫回避能力も高くなったといわれている。それゆえ、以前感染した人が再びかかることで感染が広がることが懸念されているが、昨年9月以降に始まったワクチン接種は「XBB」系統に対応しており、それが「JN.1」でも重症化予防につながるといった見解も出ている。
 ただし、新型コロナワクチンの接種費用はこれまで全額を公費で負担していたが、重症化率が低くなったことを理由に、4月からはワクチン接種費用が原則「有料」になる。

後遺症や心の健康にも配慮する

 新型コロナウイルスは、罹患後にさまざまな後遺症があることも明らかになってきた。子どもの間では感染から約2週間~数カ月経ってから発熱や下痢、腹痛、目の充血などの症状が出ることも多く、中には脳が急激にむくみ、けいれんや意識障害などが起きる急性脳症を発症し、後遺症が残るケースもある。
 全年代を通した代表的な罹患後症状では、疲労感、咳、記憶障害、抑うつ、味覚障害、睡眠障害などがあり、時間経過とともに改善することが多い。今のところ原因がはっきりしていないことから特化した治療方法はなく、やはり感染予防に努めることが最善策となる。
 コロナ禍で新しい生活様式を強いられ、イライラや違和感、不安などのストレスが蓄積した子どもの心の健康にも配慮することも大事だ。とりわけ、修学旅行などの学校行事がなくなってしまったり、受験のタイミングにあたったりした子どもは、思春期という微妙な時期において大きな影響を受けたと考えた方がいい。だからこそ、こうした子どもたちの心のSOSに家庭や学校が早めに気づき、話しかける、声を聞いてあげるなどしてケアすることがより重要になっている。

免疫力を高める生活習慣を

 どんなに感染予防を強化したとしても、100%体内への侵入を防ぐことはできない。人間はウイルスや細菌などが身体に侵入することで感染し、体内で増殖することで発病する。だが、それに打ち勝つ免疫力があれば、増殖を抑えられ発病には至らない。つまり、免疫力とは身体の防御機能であり、普段私たちが健康的な生活を送ることができるのは、免疫力のおかげなのだ。
 したがって、

 (1)バランスの取れた食事を摂る
 (2)適度な運動を行う
 (3)質の良い睡眠を確保する
 (4)ストレスを軽減する

 といった生活習慣を意識して実践し、免疫力を高めていくことが大切になる。その上で、学校ではこれまで通りの感染対策を継続していくことと同時に、人の手を借りない感染予防機器なども導入し、教職員や子どもの負担を少しでも軽減していくことを期待したい。

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