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「学校いじめ」のメカニズムと危機管理 「いじめ防止対策推進法」の光と影

15面記事

書評

今津 孝次郎 著
重大事案を精査、組織の在り方説く

 いじめの重大事態が増加している。昨年10月の新聞では過去最多となり、4割が事前に認知されていないと報道された。本書では、いじめの認知に主眼を置き、昨今のいじめを「学校いじめ」として、以前からあった「いじめる習俗」と区別している。
 次に青年前期(小学校高学年~高校)の攻撃性に注目し、どこの国でも同じ問題があり、「いじめは悪いことだからいけない」という道徳的な指導だけでは解決しないとしている。特にいじめの認知について「いじめ観と対処法の4類型」を提示する。また、いじめの価値判断に関する思考回路として、学校の「価値判断固執」思考を問題視している。この学校の「性癖」が隠蔽につながっているという。
 さらに本書の中では過去にあった七つのいじめ自死事案を参考に、その課題を洗い出し「反いじめの取り組みと学校類型」を示す。事案の多くは「機能しない学校」に分類される。どの事案もいじめの認知を巡り、学校側と被害者側の見解が異なる。そのための法制化であり、いじめ対策の「かたち」を整えたが、次はその機能が問われている。
 副題の「『いじめ防止対策推進法』の光と影」のように法律が寄与できている側面と難しい側面がある。本書では学校いじめの克服は「教育の原理」に基づき、法律は補助という提案をしている。教育と法律の間で苦悩する現場に読んでほしい一冊である。
(2860円 黎明書房)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)

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