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報道されない「学校有事」 <真の教育>を求める現場の奮闘記

13面記事

書評

向山 行雄 著
日々生じる問題を物語形式で紹介

 学校では、日々、何らかの問題が生じ、教職員はそのたび丁寧に対応している。こうした動きは、中の人には日常でも、外の人にはなかなか見えない。本書はマスコミなどで報道されることのない、日常の「有事」を物語形式で紹介する内容。主な初出は小社が編集する「週刊教育資料」の連載だ。
 主人公は架空の新米校長・鈴木五郎。着任1年目、保護者から「担任を変えてほしい」という要望があり、卒業式では「仰げば尊し」は1番から3番まで歌うべきという意見が寄せられる。2年目は産休育休教師の代わりに赴任する講師探しや同学年の担任同士の「デキ婚」、給食を巡る諸課題への対応などが続く。しかし、3年目を迎えると、発生した問題に対処するといった姿勢が変わり、自ら課題を見つけ、克服しようと動き出すようになる。
 各段階で伴走してくれるのは、校長会会長の経験のある元上司。壁にぶつかるたびに、「おやじさん」と酌み交わし、視野を広げていく。「おやじさん」とのエピソードは、このような関係性が、教育界で徐々に失われつつあることへの警鐘として加えたそうだ。
 第3部は「変化する社会と学校の苦悩」がテーマで、大川小学校津波訴訟について、教育者の視点で分析し、今後の在り方を提案している。
 物語を楽しみながら味わううちに、視座が高まり、力量も高めてくれる稀有な書だ。
(2970円 学芸みらい社)
(巨)

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