児童養護施設の労働問題 子ども・職員双方の人権保障のために
16面記事
堀場 純矢 著
安心して働ける環境問う
児童養護施設の存在は知っていても、なじみのない教職員も少なからずいるだろう。
こども家庭庁の児童養護施設の概要説明を見ると、施設数は612カ所、定員約3万1千人に対して、約2万4600人が入所する。虐待を受けた子どもは65・6%、何らかの障害がある子どもは36・7%と「専門的なケアの必要性」が増す傾向にあるという。また、「施設のケア単位の小規模化(小規模グループケア)やグループホーム化などを推進」しているのが現況(令和2年3月末)である。
本書は、そこで働く施設職員を児童福祉法に基づく施設に雇用され、児童養護問題により家庭で暮らせない子どもの生命・健康・生活・発達をトータルにケアし、社会的自立を支え、退所者や家族のケアも担う「労働者」と定義。その労働条件、健康状態と人間関係、安心して働き続けるための環境づくり、労働組合や国・自治体の役割などを、職員らに対するアンケートやインタビューなどの調査によって浮き彫りにしようというものである。
例えば、国が近年推進する「小規模化」が施設現場にどのような変化と課題をもたらしているかがよく分かる。
労働組合の役割重視は、著者自身が児童指導員だったときにその必要性、意義を知ったことに起因する。
財政措置、人的確保に課題のある施設の現状は教育現場に似て、共感する読者もいるかもしれない。
(7150円 ミネルヴァ書房)
(矢)