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一刀両断 実践者の視点から【第683回】

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論説・コラム

人は「役職」に頭を下げる

 新横綱の誕生をきっかけに、ふと思うことがあった。
 校長になる前はよかったのに、なった途端に威張るようになったと指摘される人は少なくない。
 自分にも思い当たる節がある。四十歳で県の任用係長になったときのことだ。
 4年前までは学級担任だった私が、いつの間にか「飛ぶ鳥を落とす勢いだ」と噂されるようになった。
 周囲の人たちが、役職という権力に対して態度を変えるようになったからである。
 人は、役職に頭を下げているだけで、人間として頭を下げているわけではないことは分かっていても少しずつ慢心や高慢さがにじみ出てしまうものである。これが、権力の恐ろしさなのだろう。
 人は、ちやほやされることで我を忘れるのである。
 そして、やがて「裸の王様」と陰で言われても、自分を改めることができなくなる。
 周囲には「はい」としか言わない人ばかりが残り、信念を持って意見を述べる人は排除されていく。
 私自身、根拠のない噂を流されて左遷されたことが何度かあった。それでも、後悔はしていない。
 もしうまく立ち回っていたら、いつの間にか同じ穴の狢になり、人格や誠実さを失っていたかもしれないからである。
 そうした人物を見ると、どうしても嫌悪感を抱いてしまう。
 さて、新横綱の大の里は、これからどのように成長していくのか。今後が楽しみである。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、大学教授、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)

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