AIに書けない文章を書く
12面記事
前田 安正 著
ユニークな表現でコツ示す
生成AIには「文書」は書けても「文章」は書けない。これが本書の出発点となる命題だ。近年、生成AIが急速に普及し、誰もが容易にものを書いたりまとめたりすることができる時代になった。だが、生成AIが得意とするのは「文章」の執筆ではなく、あくまでも「文書」の作成である。
文書とは、議事のまとめや広報文、申請書といった書き物のことである。対して、文章は書き手の思考や感情が表現されたものを指す。だから、人間の思考や感情に立ち入ることも表現することもできない生成AIは、決して「文章」を書くことができない。
では、どうすれば優れた文章を書くことができるのか。本書では、長年にわたり文章術を磨き上げてきた著者が、AIには書けない文章を書くためのテクニックやコツを惜しげもなく紹介している。すぐに実践可能な作法・技法が丁寧に示されているので、文章を書くことに苦手意識を持っている読者にとって有益であろう。「文章は高級ブランド店よりコンビニの棚を目指せ」「肉まんよりミルフィーユ」など、ユニークな表現でコツが示されており、優れた文章とは何かがイメージしやすい。また、「一文は短く、自信を持って書くこと」など、一見、単純なように見えて奥の深い文章作法も示される。改めて「書くこと」に向き合いたいと考えている全ての読者に手に取っていただきたい一冊である。
(946円 筑摩書房(ちくまプリマー新書))
(井藤 元・東京理科大学教授)