いじめに対する大人の誤解 スクール虐待の現実
12面記事
小森 美登里 著
加害者に寄り添う大切さ提起
「優しい心が一番大切だよ。その心を持っていないあの子たちの方がかわいそうなんだ」。これは、学校でいじめに遭い15歳で自殺した小森香澄さん(著者の愛娘)が遺した言葉である。それから四半世紀。著者はこの言葉の持つ意味をかみしめながら、いじめで苦しむ子どもを助けたい、いじめ問題を解決したいという一念で活動を続けてきた。平成15年にNPO法人ジェントルハートプロジェクトを立ち上げ、全国の学校や行政機関で1600回を超える講演を行ってきた。
著者が何よりも強調するのは、子どもたちが幸せで自由に生きる権利を持っているということである。いじめは、その対極にあり、いじめの被害者は心を傷つけられ、その人権を侵害され、はく奪される。子どもたちをいじめ被害から守るには、教師や保護者などの大人たちの適切な子ども理解といじめへの早期対応が重要であることは論を待たない。
同時に、著者が提起するのは、いじめ加害者の抱えている窮地に寄り添い、その切ない思いに心をはせることの大切さだ。「心が不安定で、ストレスを感じているときにいじめてしまう」。これは、講演後の子どもの心の叫びだ。
いじめ問題は、子どもの問題ではなく、生きづらい現代社会の問題なのである。人が幸せに生きる権利を保障する社会の構築こそが、何よりも強く求められているのである。
(1760円 新日本出版社)
(都筑 学・中央大学名誉教授)