自由進度学習の課題から考える「自立型往還学習」のススメ
17面記事
青山 雄太 著
主体的学び具現化へ方略示す
本書が取り上げている「自由進度学習」は、1970年代に始まった、愛知県の緒川小学校の先進的取り組みとして全国的に注目された実践である。著者は、それをさらに改善・充実させた「自立型往還学習」を実践し、仲間と日々改善に努めていることを披歴している。
自由進度学習は2000年代になると衰退していったが、その要因は、著者も指摘しているように、教員自身がファシリテーターやジェネレーター等と変容する役割に対応できなかったことが大きい。だが、令和3年1月の中央教育審議会答申で「個別最適な学び」「協働的な学び」がこれからの学校教育のあるべき学びの姿であることが示され、1人1台端末の貸与、インターネット環境の充実等により、学習環境が大きく改善され、改めて自由進度学習が注目されるようになってきた。
自由進度学習においては、学びのつくり手は子ども自身であるが、現在の多くの学校ではそうなっていないことに著者は強い危機感を抱いている。そして、個別最適な学びと協働的な学びの充実による主体的・対話的で深い学びの実現を具現化する方略として「自立型往還学習」を提案する。特に、第6章では公立学校で自由進度学習、自立型往還学習を実現するためのヒントが丁寧に紹介されている。教員の役割の変容に戸惑っている人にとって、貴重な手引となることが期待できる。
(2420円 明治図書出版)
(新藤 久典・元国立音楽大学教授)