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不確実な時代を生きる武器としての憲法入門

18面記事

書評

大城 聡 著
基本理念、役割など分かりやすく

 憲法がなぜ「武器」か。著者もこの言葉を使うかどうか迷われたという。だが、著者が26歳の時に法律家を志す原点となった、ハンセン病患者を隔離する「らい予防法」が憲法違反だと判断した地裁判決。それは、たとえ多数決で決めても、憲法で保障されている自由と権利は侵すことができないという宣言であり、ハンセン病の人たちにとって、たとえ法律が相手でもおかしいものはおかしいと言える「武器」に違いなかった。
 多数決は万能ではない。「国のため」「公益のため」といった大義名分も、時には少数者を踏みにじる暴力になることがある。
 日本を含む立憲主義の国々で憲法が果たしている役割の大切さや、そもそも憲法が何のためにあるのかといった基本理念を理解することは、「主権者」として必須の教養だろう。
 「すべての権利は、闘いとられたものである」(イェーリング『権利のための闘争』より)。だからこそ、憲法が保障する自由と権利は「国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」(日本国憲法第12条)。
 本書は、法律を専門にしていない大学1年生に憲法入門の講義をし「ベストティーチャー賞」にも選ばれた著者の経験を生かし、憲法の原理や基本理念、役割、また社会の問題に対し主体的に考え行動することの大切さなどを分かりやすく説明する。格好の入門書である。
(1870円 旬報社)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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