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クロスロード 交差する視点(7)公立高校入試を併願制に

10面記事

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中室 牧子 慶應義塾大学教授

 政府が公立高校の単願制の見直しを進めることが大きく報道された。これは私が、東京大学マーケットデザインセンターの小島武仁教授らと共に、4月22日の「デジタル行財政改革会議」で提案したものだ。
 周知の通り、現在多くの都道府県で公立高校入試は「単願制」で、受験生は1校にしか出願できない。このため、生徒たちは「本当に行きたい学校」ではなく「合格の可能性が高い安全校」を選ばざるを得ない状況が生まれている。そこで、生徒がより希望に沿った進路を選べる仕組みとして「受け入れ保留アルゴリズム」を用いた併願制の導入を提案した。
 これは単純な併願制とは異なり、次のような流れで進む。まず、受験生が志望校を第1志望から第3志望のように順位付けして出願する。各高校も、内申点や学力検査、面接の結果に基づいて受験生を評価し、順位付けする。
 次に全ての受験生が第1志望校に「仮申し込み」する。各高校は、定員の範囲内で最も評価の高い生徒を一時的に「受け入れ保留」とする。定員を超えた他の生徒は「不合格」となり、その生徒たちは、次に希望する学校に仮申し込みを行う。このプロセスを繰り返すことで、生徒は不合格にならなかった中で最も行きたい学校1校だけに合格する。
 この仕組みを導入すれば、出願後の辞退や追加合格の連絡といった煩雑な手続きが増えることなく併願制を導入できるため、教職員の事務負担を心配する必要はない。何より、生徒は合格可能性を意識して志望順位を決める必要がなくなるため、「本当に行きたい学校」に正直に出願できるようになる。進路指導も、生徒が本当に進みたい道に進むためのものに変わるだろう。
 この制度は、生徒と学校の双方にとって公平性が高く、無駄のない設計だ。既に保育所の入所選考や研修医の配置などでも活用されており、有効であることが確認されている。今後は先進自治体と連携して試行的導入を進めるという段階となる。

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