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「質の高い教師」とは何か

20面記事

書評

福井 雅英 著
子ども理解を中心に考察

 「熱血教師」という理想像はかつてテレビドラマの主題として多く描かれた。今では「昭和の教師」として懐古される存在となりつつあるが、現代において望まれる教師像とは、どのようなものだろうか。
 本書は、現代の教育現場に求められる教師の資質を考察している。構成は、どんな教師でいたいか、質の高い教師を考える視点などの6章で構成される。教師を「発達援助専門職」と位置付け、子ども理解を中心とした身体化された臨床知を重視する立場を取る。また、生活綴り方などの古典的実践を紹介しつつ、新自由主義が教育の公共性を損なう危険性を指摘する。さらに臨床教育学の視点から「子ども理解のカンファレンス」の重要性を強調している。
 特筆すべきは、「二○○九年型教職観」として示される現状分析である。(a)仕事と私生活を切り離す、(b)仕事の範囲を限定する、(c)管理職の指導の下で勤務する、(d)学力向上という組織目標の達成に尽力する―といった特徴を挙げ、教職の矮小化を指摘している。この傾向が現在の教員志望者の減少の一因かもしれない。
 本書は、教師の在り方を問い直し、新たな教育の方向性を模索する上で示唆に富む内容を提供している。教師を志す人、教育の未来に関心を持つ読者にとって、重要な視点を与える一冊である。
(2640円 新日本出版社)
(中村 豊・前公益社団法人日本教育会事務局長)

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