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道徳科「内容項目」を問い直す! 道徳授業づくりハンドブック

13面記事

書評

高宮 正貴・椋木 香子・鈴木 宏 編著
東西の思想参照、理解深める

 道徳の授業が「特定の答えを児童生徒に言わせたり書かせたりする」展開に陥ることは少なくない。では、多様な答えを受け止め、子どもたちの考えを深めることのできる道徳科の授業はいかにして可能か。著者らは、何よりもまず、道徳科を担当する教師自身が道徳的諸価値を多面的・多角的に捉えることが必要だと訴える。執筆者は小・中学校の教員や道徳教育の研究者など、総勢30人。理論編・実践編の2部構成となっており、400ページを超える充実した内容となっている。
 「理論編」では、内容項目に含まれている道徳的諸価値の固有の意味と相互の関連性を深く理解するために、洋の東西を問わず、さまざまな思想が参照される。教育哲学を専門とする編者らによって、プラトン、アリストテレス、カント、ミルなど哲学の諸理論が分かりやすく解説されると共に、東洋・日本思想の知見も紹介され、道徳的諸価値の意味が立体的に浮かび上がる構成となっている。理論編を読めば、内容項目に含まれている道徳的諸価値は、一つ一つがバラバラに切れているものではなく、互いに連関していることに気付かされるだろう。また「実践編」では、理論編の内容と関連させながら、小学校高学年と中学校の実践事例を基に授業づくりの方法が示され、大変参考になる。
 「考え、議論する道徳」の実践に向けてぜひとも手に入れておきたい一冊である。
(4180円 北大路書房)
(井藤 元・東京理科大学教授)

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