基礎から身につく「大人の教養」NHK調査でわかった日本語のいま ゆれる日本語、それでもゆるがない日本語
13面記事
塩田 雄大 著
時間割風章立てなど機知に富む
「近頃の日本語は乱れていると思いますか」と聞かれたら、どう答えられるだろう。感覚的に捉えて答えそうだが、問題は単純ではないようだ。そもそも正しい日本語とは、どの時代に使われていた言葉を指すのかで違ってくるそう。そこで著者は、今生きている人たちが言葉をどのように考え感じているのかを調査、客観的かつ具体的に日本語について語っている。
著者はNHKに入局し、放送で用いる日本語の方針立案・策定に関連する言語調査・研究を担当という経歴を持つ。日本語を多角的に掘り下げて見つめてこられたのだろう。しかし、本書は難解なものではなく、むしろ親しみやすさを感じる。楽しく日本語について考えられる工夫が凝らしてあるからだ。章立てが時間割に見立てて設定されるなどウイットに富んでいる。1時間目学活、2時間目生活…といった具合。教科だけではない。「日本語を味わう」として給食時間もある。そこでは例えば「空揚げ?唐揚げ?」として、どちらの表記が正しいのかという質問に回答・解説されている。その解説は調査によるデータを根拠に分析して説明。どの解説も最後の段落の著者の言葉はエスプリが効いていて楽しく読める。
長い歴史の中で言葉は生きている。そしてこれからも不変的に、時には形を変えながらも生きていく。その中で「相手への敬意を忘れずに使っていく」という言葉を胸に刻んだ。
(1870円 世界文化社)
(藤本鈴香・大谷大学教職アドバイザー)