日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

一刀両断 実践者の視点から【第699回】

NEWS

論説・コラム

「諦めない対話」を

 広島への原爆投下という惨劇から、80年が経った。
 「やすらかに眠ってください。過ちは繰り返しませんから」と石碑に刻まれた言葉に、胸が詰まる。
 その一方で、核の脅威をちらつかせながら、戦争は今も続いている。トランプ大統領が「広島と長崎への原爆投下が戦争を終わらせた」と正当化する発言をしたことは、決して許されるものではない。
 しかし、現実として、今も地球上では戦争が続いている。広島や長崎で殺された人々は民間人だった。原爆投下は、明らかな無差別殺人であり、実験であったことがわかる。
 欲望や考え方の違いが殺し合いに発展し、戦争となる。
 「戦争の反対は何か」と、私は講話の際によく問いかける。すると、「平和ではないですよね?」と返されたことがある。私は「諦めない対話」だと説明している。
 現在、ますます軍備の拡張が進み、自国の利益のみを優先して共存共栄を否定するような動きが、国内外に見られる。
 人の悲しみの上に、自分の幸福は築けないはずだ。それでもなお、為政者の言動には、ヒロシマの心を体現する姿勢が求められている。
 被爆者の平均年齢は86歳となり、語り継ぐことの難しさが増している。
 同質性が強くなると、異質なものが排除されやすくなる。さらに、自分が正しいと過信すると、その行為が排除へと向かい、中にはデマや噂を流すという、愚かで卑怯な行為を正当化しやすくなる。
 戦争も、「諦めない対話」も、すべては人の心によって生まれる。
 その心を鍛える学びが必要だが、現代の教育には、それが明確に位置付けられていない。言い換えれば、それは「心の鍛錬」だと、私は捉えている。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、大学教授、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)

論説・コラム

連載