「教育」を学ぶあなたに贈る20のストーリー すべてのひとに 良質な教育を いつからでも どこででも
12面記事
高櫻 綾子 編著
深さや重み 学校の枠超え伝える
本書の最大の魅力は20人の執筆者の存在だと思う。コラム担当の人も含め、それぞれの経歴が多様である点が厚みを加味している。教育に関わる現場の第一線で活躍され、その研究分野から「教育」を深く掘り下げ、専門的に解説されたり、考えを語られたりしている。当たり前のことだが、教育は学校だけではないのだ。あらゆる場で多種多様な関わり方がある。改めて「教育」の深さ、重み、責務、そして未来を考えさせられる一冊となった。
題名通りまさに「ストーリー」だ。「教育」というキーワードを核としてさまざまなストーリーに引き込まれる。10章と10のコラムから成っているが、読後は、なぜか心が軽やかな快適さを覚えるのが不思議。何といっても構成が興味深い。まず、各章のタイトルが本文へいざなうプロローグのような印象を受ける。第1章であれば「教育とは、いのちを育み、自ら育とうとする力を支援する営みです」、またコラムでも「シャチとの信頼関係の秘訣は、人間の教育について学んだなかにありました」や「教育によって、明日へとつながる希望を届けたい」など。
そしてどの章も最初に「誘いのことば」があり、最後には「これから教育を学ぶあなたへ」として著者からのさらなる問い掛けやメッセージが掲載され余韻を残す。
この後のストーリーをあなたはどう紡ぐだろう。まだまだストーリーは終わらない。
(2860円 朝倉書店)
(藤本 鈴香・大谷大学教職アドバイザー)