新時代の教育相談 つなぐ、支える、ともに歩む
14面記事
高岸 幸弘・黒山 竜太 編著
不登校、いじめ対応など掘り下げ
子どもたちを取り巻く環境が大きく変化する中、子どもたちとつながり、支え、共に歩むために、現場の実情に寄り添いながら、教育相談の意義と実践について丁寧に掘り下げた、目配りの行き届いたテキストである。
第Ⅰ部で教育相談、学級経営、子どもの発達、カウンセリング、精神医学的知識などの基本的知識を、第Ⅱ部で不登校、いじめ、自殺予防、性の多様性、児童福祉領域との連携などの具体的問題への対応を分かりやすく整理している。
多くの問題では、事後の対応だけでなく、発生前からの予防や早期の発見・対応が求められる。そのためにも、発達段階についての正しい理解、カウンセリングの理論、指導すべきことは指導しつつも、教師の考えの押し付けにならないよう内省することの必要性など、基本的な事項を押さえておきたい。
また、例えば不登校に関しては児童・生徒本人、保護者、教師の間で認識に乖離があることや、特に児童福祉施設の子どもたちなどにとって「普通の生活を送ること」がいかに重要で、かつ大変なことであるかといった、忘れてはならない視点も示されている。
子どもたちが他者や自分を尊重できるようになるために、教育相談のマインドとエッセンスをフル活用してほしいという著者らの温かい思いが伝わってくる。
(2530円 北樹出版)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)