一刀両断 実践者の視点から【第710回】
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道徳教科化の成果は
道徳が「特別の教科」として位置づけられ、教師は児童・生徒の評価を明確に記述することが求められるようになった。これまで教科外活動として扱われてきた道徳の授業は、小学校では2018年度から、中学校では2019年度から教科として再スタートした。これは、国の教育再生実行会議の提言を受けてのものであり、背景には各地で相次ぐいじめ問題があった。
しかし、道徳の教科化によって、いじめ問題に対してどれほどの成果や効果があったのかという検証がなされていない。スクールカウンセラーの配置も進められているが、いじめや不登校の件数は依然として増加傾向にあり、明確な改善策は示されていない。現場の教師たちは、対策が講じられていると説明されながらも、実際には問題がより深刻化していることを肌で感じている。
中教審が方向づけた施策に成果が見られない場合、誰がその責任を持って説明し、改善に取り組むのか。中教審の委員は、まず学校現場に足を運び、現実を肌で感じる必要がある。机上の議論を繰り返すだけでは、実効性のある教育改革にはつながらない。
県の教育委員が学校視察に訪れることもあるが、その際には清掃などを含めて特別な準備がなされ、普段の学校の姿とは異なる状態で迎えることになる。こうした「上げ膳据え膳」の視察では、実態を正しく把握することは難しい。これまで多くの中教審委員と対話を重ねてきたが、期待を超える方に出会ったことは一度もない。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、大学教授、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)