一刀両断 実践者の視点から【第711回】
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家庭内暴力と処分
小学校教諭が配偶者と口論の末、首を絞めたとして減給処分を受けたという報道があった。その記事に違和感を覚える。
不起訴となったのであれば、通常はそれで終わるはずであり、なぜこれがニュースとして取り上げられるのか理解に苦しむ。仮に家庭内の諍いで殺害に至ったのであれば重大な事件であるが、未遂にとどまったのであれば、望ましいことではないにせよ、家族間の紛争として起こり得る範囲の出来事である。
今回の件で教育委員会が謝罪を行ったことにも疑問が残る。すでに教諭本人には処分が科されているにもかかわらず、さらに職員が記者会見を開いて謝罪するという対応には違和感がある。
もし教育委員会が責任を負うとするならば、教員一人ひとりの家庭内の出来事や生活の在り方にまで責任を持つことになる。そうなれば、親子喧嘩や夫婦間の諍いなども把握し、公表しなければならないという話になる。
法的根拠や社会通念に照らしても、今回のような事案をここまで公にし、対応する必要があるとは思えない。殺人未遂で有罪判決が下されたのであれば、話は別である。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、大学教授、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)