認定クラブに公的支援 部活動の地域展開でスポーツ庁、文化庁が検討
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ガイドライン 指導者の質・生徒の安全確保策を充実
部活動の地域展開に向けてスポーツ庁と文化庁が有識者会議での議論を深めている。両庁は9月17日に、ガイドラインの改訂に向けた議論を始め、受け皿となる地域クラブを自治体が認定する制度の案を有識者会議に示した。認定を受けたクラブは、運営に関する公的支援を受けられるようにする考えだ。26日には、指導者認定制度のたたき台も示している。
ガイドラインの改訂では、地域展開のための体制整備策を明記する他、不適切な指導やいじめの事案が相次いでいることから、指導者の質や生徒の安全確保に関する内容を充実させる。パブリックコメントも経た上で冬にも新たなガイドラインをまとめる方針。
現行ガイドラインは令和4年12月に策定。平成30年に両庁がそれぞれで活動時間や休養日の設定などを定めたものを統一し、令和5年度からの3年間の改革推進期間中での地域クラブ活動への移行に向けて体制構築策を示していた。
両庁が設置した部活動改革実行会議が今年5月に報告書をまとめ、来年度以降は「改革実行期間」として部活動の地域展開を進めていく考えを示したことを受けて今回、ガイドラインの内容も改めることにした。
今回の改訂では、現行のものをベースとしつつ、中学校段階での地域展開を進めるに当たって、実行会議の報告書の内容を盛り込む。当面の間、中学校でも部活動を継続する自治体がある他、高校では部活動は存続していくことから、学校部活動に関する内容も示す。
また、地域クラブの認定制度に関する内容はガイドラインの中で示す考え。制度の詳細が固まり次第、ガイドラインと合わせてパブリックコメントを実施する。
日本版DBS活用も
地域クラブの認定制度では、適切に運営されるよう、国で要件を設定する。これまでの部活動に代わるものとして、
・成果を出すことに偏重せず、強化のための選抜はしない
・国のガイドラインに沿った活動日数や時間、休養日を設定する
・自治体などが実施する研修を受講した人材が指導に携わること
・営利を主な目的とせず、団体の適切な運営体制を整えていること
・けがなどに備え、保険などに加入すること
―などを求める。指導者による性暴力防止のため、日本版DBSの活用も検討している。
国で示した要件を基に、審査や認定は自治体が行う。認定を受けたクラブは、公共スポーツ施設の使用料の減免や、教職員の兼職兼業の許可の対象とする。
17日の会合では指導者の質・量の確保に関する議論が中心だった。各競技団体の指導者資格の他、教員免許所持者の活用を求める声が相次いだ。保健体育や音楽など特定の教科に限らず、他校種・教科の取得者も含めて検討をすべきだとの声が複数あった。
誓約書、研修課す方向
「認定地域クラブ」での指導は、自治体に登録された人材が担うことにする。26日の有識者会議に示した案では、登録に当たって市区町村が実施する研修のメニューなどを例として掲げた。不適切な指導をなくし、生徒が安心して活動できる環境を整える狙いがある。改訂する部活動ガイドラインには指導者登録制度の内容も盛り込む。
指導者の質の確保のため、たたき台では、登録時にハラスメントやいじめに関する誓約書の提出、研修の受講を求めることとした。
研修メニューの例として「暴言・暴力・ハラスメントの防止」や「女子生徒の健康課題や障害のある生徒等への配慮」「事故等が発生した際の現場対応」などを示した。登録期間は最長4年間で、更新時にも研修の受講を義務付ける。
自治体、団体の役割案
26日の会議には、部活動の地域展開を進める上での自治体や団体の役割案も提示した。市区町村は地域クラブ活動の認定や指導者・活動場所の確保を担うこととし、都道府県は広域的に支援することを提案した。
地域クラブの運営団体と実施団体については、両者の役割を兼ねる場合と異なる場合があるなどとして柔軟な連携・協力を求めた。


