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MEXCBTとは? 仕組みやメリット、活用事例を紹介

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 子どもたち一人ひとりの力をより効率的に伸ばすために、学校教育の現場ではデジタル機器を活用した学びが広がっています。

 その取り組みの一つが、文部科学省が開発した「MEXCBT(メクビット)」です。

 日常の授業から学力調査まで幅広く活用できるこのシステムは、児童・生徒の学習の質を高めるとともに、教員の業務負担を軽減する仕組みとして全国に導入が進んでいます。

MEXCBTとは

 MEXCBTとは、文部科学省が開発した、児童・生徒向けのコンピュータを利用して実施される試験(CBT:Computer Based Testing)システムです。名称は、文部科学省の英語表記であるMinistry of Education, Culture, Sports, Science and Technologyの頭文字を取った略称「MEXT」と「CBT」を組み合わせた造語です。

 MEXCBTは全国の学校設置者・学校で無償で活用でき、児童・生徒が、学校や家庭から学習やアセスメントができる仕組みとして整備されています。

 令和6年には公立小学校の9割超、公立中学校のほぼ全てがMEXCBTに登録を完了しており、教育現場に広がりを見せています。

出典:文部科学省『文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)について』『文部科学省における教育データの利活用に関する取組状況』『よくある質問 MEXCBTについて

MEXCBTのシステム概要

 MEXCBTは、児童・生徒が学校や家庭の端末からアクセスし、学習や調査を行えるシステムです。授業や学力調査を効率的に支援するための主な使い方や機能、搭載コンテンツなどを紹介します。

MEXCBTの主な使い方

 MEXCBTは、普段から使用している学習端末を用いて、学校だけでなく家庭からもアクセスが可能です。学習eポータル標準準拠ソフトウェアと連携することで、デジタル学習環境全体のハブとして機能し、学習管理を一元化できます。

▽MEXCBT使用の流れ

 (1)教員が学習eポータル標準準拠ソフトウェアにログインし問題を選び、児童・生徒に割り当てる
 (2)MEXCBTで児童・生徒が問題を解いて学習する
 (3)学習eポータル標準準拠ソフトウェアで教員は学習結果を、児童・生徒は自分の学習結果を確認することができる

出典:文部科学省『文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)について

MEXCBTの機能と搭載コンテンツ

 MEXCBTには、授業や学力調査を支える多様な機能と、公的機関が作成した豊富な問題コンテンツが搭載されています。

▽主な機能

 ・選択式や短答式問題は自動採点
 ・問題の検索や配信の実施
 ・見やすいテスト実施画面
 ・教員による問題作成、手動採点も可能

▽搭載コンテンツ

 ・国や自治体等の公的機関が作成した問題約4万問
 ・全国学力・学習状況調査や高卒認定試験の過去問題
 ・自治体独自の学力調査問題
 ・動画を活用した問題など多様な形式

 これにより、指導や評価の効率化とともに、児童・生徒に多面的な学びの機会を提供できます。

出典:文部科学省『文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)について

MEXCBTのメリット

 学力調査をCBT化することで、児童・生徒・教員の双方に多くの利点があります。従来の紙による調査に比べ、業務の効率化と学習機会の拡大が実現されます。

▽児童・生徒へのメリット

 ・問題に取り組むと即座に正答率が示され、学習の達成度を実感できる
 ・動画や音声を活用した問題により、視覚的・聴覚的に理解を深められる
 ・自宅や臨時休校時でもオンラインで利用でき、学びを継続できる

▽教員へのメリット

 ・問題冊子の印刷や配布・回収が不要になり、業務が効率化される
 ・問題を配信するだけでテストを実施でき、自動採点により採点作業の負担を軽減できる
 ・学習結果を即座に確認できるため、一人ひとりの状況を把握しやすく、個別指導や授業改善に生かせる
 ・定期テストや授業内の理解確認など多様な場面で活用できる

出典:文部科学省『文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)について』『MEXCBT(メクビット)の活用

MEXCBTの課題

 MEXCBTの導入には多くの利点がありますが、現場では次のような課題も指摘されています。

 ・通信環境と端末の安定性:
 不具合や接続不良を防ぎ、安定した利用環境の整備が必要
 ・学習環境への習熟と発達段階等への考慮:
 端末操作に不慣れな児童・生徒が違和感なく取り組めるよう支援が必要
 ・教員による活用への戸惑い:
 授業や学力調査に効果的に取り入れるため、活用方法の共有や研修が重要
 ・CBT化による学校現場への負担の考慮:
 動作確認や不具合対応に時間を要するため、技術的な支援体制の整備が不可欠
 ・調査設計と実施体制の強化:
 専門家の知見を生かした設計改善や、データ分析に精通した人材確保が必要

 これらの課題に対し、段階的な試行と検証を重ねることで改善を図り、全国規模での安定的な実施へとつなげていくことが期待されています。

出典:文部科学省『文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)の活用に関する説明会

MEXCBTの活用事例

 MEXCBTは、授業改善や学力調査に幅広く活用され、学校現場と自治体双方において、学習の質を高める基盤として機能しています。

▽大阪府枚方市立開成小学校

 ・教科書やプリントに加えてMEXCBTの問題を授業に取り入れた
 ・児童の理解を深める授業改善に活用した
 ・授業改善・学力向上ツールとしてさらなる活用を図っている

▽福岡県春日市教育委員会

 ・紙媒体で実施してきた学力調査をMEXCBTを活用した実施に切り替えた
 ・市独自のMEXCBT運用マニュアルを作成し、教員・児童・生徒に共有した
 ・得点が8割未満の児童・生徒を抽出し、結果確認や振り返りを行った
 ・自動採点により、瞬時に結果を把握してスムーズな学びの調整につなげられた

出典:文部科学省『文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)活用事例 【大阪府】枚方市立開成小学校』『文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)活用事例 【福岡県】春日市教育委員会(MEXCBT×地方学調※1)

より良い教育環境を支えるMEXCBT

 MEXCBTは、児童・生徒の学力向上と教員の負担軽減を同時に実現できる仕組みとして全国に導入が進んでいます。動画や音声を活用した問題や自動採点機能などを通じて学びの幅を広げ、学習状況を的確に把握できる点も大きな強みです。

 今後は、学校現場における学びの質をさらに高め、持続可能な教育環境を支える重要な基盤となることが期待されています。

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