とびこえる教室 フェミニズムと出会った僕が子どもたちと考えた「ふつう」
16面記事
星野 俊樹 著
ジェンダー平等希求する実践
「子どもたちが姿勢よく椅子に座り、立ち歩きをすることなく、規律を守って整然と授業を受けていること」そして、私たち教師は、「列をきちんと揃え、おしゃべりせずに並ぶよう子どもたちに指導する」ことを求められた著者は、「『これって、フーコーが指摘した監獄としての学校じゃん』と空恐ろしい気持ちになりました」と書いている。「子どもを徹底して管理的に指導することができなかった」著者は校長に叱責され、心を病み「一年半休職すること」になる。著者はそこから立ち上がる。
「女らしさ、男らしさは実在しない。いつの間にかでき、その流れにのって一生を過ごすあり方でいいのか。自分の希望を捨ててまでらしさに従うべきなのか?」と書いた男児の作文に著者は「胸が震え」自分が小学校5年生の時には「到底たどり着けなかった認識」と反省する。「ふつう」を疑い、ジェンダーバイアスを相対化させる視点は、「子どもたち自身があるがままの自分を肯定し、これからの人生をしあわせに生きていくための大きな助けとなるはず」と説き、自らを省みて、「私は世の中のふつうという社会通念にずっと苦しんできたにもかかわらず、それと対峙する勇気が持てずにいたのです」と書いている。
教育界や社会通念の中に潜む問題点を、自らの体験と実践を通して、冷静に、静かに分析し考察した渾身の力作と、拝読した。
(1870円 発行 時事通信出版局 発売 時事通信社)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)