新校舎に加湿環境を標準整備 天井埋め込み式加湿器を全教室に導入
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各室に配備された天井埋め込み式加湿器とリモコンスイッチ
江戸川区立篠崎小学校
近年、学校施設の新築や改修において、天井埋め込み式加湿器を標準設備として整備する事例が増加している。これは、児童生徒の健康管理と学習環境の質向上を目的とした取り組みである。令和5年度に新校舎が竣工した東京都江戸川区立篠崎小学校では、校内すべての教室および職員室等に、ウエットマスター社製の「てんまい加湿器」が導入された。今回は、同校の平林千惠校長に加湿器の活用状況とその効果について話を聞いた。
教室環境の質を高める加湿設備の導入
加湿器の最大の利点は、室内の湿度を適切に保つことだ。冬季は暖房の影響で空気が乾燥しやすく、呼吸器系の粘膜が傷つきやすくなるため、風邪やインフルエンザなどの感染症リスクが高まる。加湿器を活用することで、湿度を40~60%に維持し、ウイルスの活性を抑える効果が期待される。
また、乾燥による肌荒れや喉の不快感を防ぐことで、子どもの集中力や学習意欲の維持にもつながる。特に受験期を迎える子どもにとっては、体調管理が学習成果に直結するため、加湿環境の整備は重要な支援策となる。
こうした中、「てんまい加湿器」は、天井内に本体を設置し、吸込口と吹出口を天井面に配置するカセット型構造を採用している。これにより、室内の美観を損なうことなく、空調の運転状況や風量の変動に左右されず、教室全体を均一に加湿できる点が特徴である。
適切な加湿を保ち、児童の体調管理に活かす
今年4月に赴任した平林校長は、同校での使用経験は浅いものの、前任校でも同様の設備を導入していたため、その利便性を実感しているという。「以前の学校ではポータブル加湿器を使用していましたが、毎日の給水や週1回の清掃など、衛生管理が教員の負担になっていました」と振り返る。さらに、1人1台端末の導入に伴い、電源容量の制約から加湿器の使用を断念せざるを得ない場面もあったという。
「てんまい加湿器」は自動給水機能を備えており、日々の水補給が不要であるため、教員の手間を省くことができる。メンテナンスも年1回程度で済み、学校運営上の負担が少ない点も評価されている。気化式で静音性にも優れており、強運転時でも運転音は約40 dBと低く、「授業中に稼働していても、音が気になることはありません」と校長は語る。
同校では、加湿器の稼働時期をおおよそ10月中旬から春先までとし、教室ごとに教員が湿度を確認した上で運用している。「児童の体調管理に直結する設備として、安心して活用しています」と信頼を寄せる。
新型コロナウイルスの制限解除以降、獲得免疫の低下や感染対策の緩みにより、さまざまな感染症が継続的に流行している。特に冬季はウイルスの持続力が高まるため、学校閉鎖などの集団感染を防ぐためにも、加湿器の効果的な活用が求められる。教育現場においては、衛生環境の整備が児童の健康と学びを支える基盤であることを改めて認識したい。