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学校とジェンダー 「ふつう」って何?

14面記事

書評

山根 真理・高橋 靖子 編著
性教育、部活などの場面考察

 近年、LGBTQやジェンダーに関する社会的認識は着実に高まりつつある。映画やテレビでも多様な性の在り方が可視化されてきた。しかし、学校教育の現場では、教科書にジェンダーや性の多様性に関する記述はあるが、それを積極的に活用した授業実践はまだ十分とは言えない。
 本書は、教育関係者に向けて、学校におけるジェンダーの課題を含め、「学校とジェンダー」に関する最新の学術動向と教育実践に関する基礎知識と基本的考え方を提供することを目的に企画された一冊。
 本書の最大の特徴は、教育学・社会学・NPO活動など、多様なバックグラウンドを持つ執筆陣による多角的なアプローチにある。学校文化、セクハラ、性教育、制服、部活動、進路指導など、教師が日々直面する教育実践の場面を通して、ジェンダー規範がいかにして再生産されているかを明らかにしている。また、各章末には最新のトピックやNPOの声を取り入れたコラムが収録されており、理論と実践をつないでいる。
 教師にとっての最大の課題が「ジェンダーの解像度」を高めることである。その障壁となるのが、長年にわたり形成されてきた「学校文化」だ。以前、昭和の教師が令和の学校にタイムスリップするというドラマが話題になったが、学校が「ジェンダー・ステレオタイプ」再生産の場であるという指摘に、学校関係者は耳を傾けるべきであろう。
(2420円 学事出版)
(中村 豊・前公益社団法人日本教育会事務局長)

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