「しない」が子どもの自力を伸ばす 叱らない・ほめない・コントロールしない、狩猟採集民の子育て術
13面記事
マイケリーン・ドゥクレフ 著 谷田 美尾・吉田 新一郎 訳
伝統的育児から現代へのヒント
「毅然と」「優しく」子育てをしようと全力を尽くす著者が、まったくうまくいかず、疲弊する。そしてそんな自分に自信を失い、欧米の視点に偏っている子育てに疑問を持ち始め、狩猟採集民の子育てを知るために、マヤ、イヌイット、ハッザベに娘ロージーと旅に出る。そこで現地の家庭に入り、各地の子育てを学び、それを基にロージーの子育てをリスタートし、その効果等について分かりやすく詳細に表現した内容となっている。また、著者が実体験から学んだことを中心に、文化人類学者やジャーナリストなどのさまざまな研究成果に基づいた論調が随所に見られ、子育ての実に具体的な方法が、盛りだくさんに掲載されており、子育てに悩む誰もが今すぐにトライしてみようかという構成となっている。
中でも、「TEAM子育ての四本柱」の「『共に過ごすこと』『励ますこと』『自立』『最小限の干渉』」というまったく別の視点を中心に据えることで、子どもとより良い関係を築き、親子共々成長できる、そんな可能性を感じる。さらに、子どもをいかにコントロールするかが重視されてきた学校教育の在り方や教師の指導観の転換に大きな示唆を与え、「叱らない」「ほめない」「コントロールしない」など表題の「しない」が、子どもの自力を伸ばすということに目を向けさせてくれる一冊でもある。
(2750円 築地書館)
(中川 修一・前東京都板橋区教育委員会教育長)

