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多様性と凝集性の社会学 共生社会の考え方

13面記事

書評

岡本 智周 編著
公教育、機会保障の在り方も

 「従来、共生は個々の権利の擁護と差異の承認によって差別の克服を求める言葉であったが、そこに『つながりや絆』の要請が加えられ、結果として社会のなかの『多様性の尊重』と社会の『凝集性の確保』を同時に果たそうとする概念となった」と編著者は指摘。「多様性の尊重」と「凝集性の確保」の両立の困難性を乗り越える道を指し示す。
 「共生」やその論点、「社会的凝集性」の概念史(第1、2章)を語った上で、共生の英語訳(第3章)や多文化共生政策(第4章)、沖縄の「先住民族論争」(第5章)を事例に多様性の尊重とは何か、凝集性の確保を問い、同様に「選抜の機会」としての学校教育(第6章)、公設フリースクール(第7章)を取り上げ、公教育の在り方、機会保障なども論じていく。
 例えば、多文化共生社会について、外国人を日本人化するような視点での政策は、「外国人」「日本人」のように、マジョリティー側による既定した役割の振り分けであり、「格差の是正や権利の承認に関する議論を足がかりに、異質性や差異そのものの社会構築性へと目を向け」る必要性を指摘する。
 障害者と共に生きる、男女共同参画など、学校教育では「共生」という考え方への理解が絶えず求められる。ただ「共生」イメージは指導者により、異なるかもしれない。本書に触れることで、自身の「共生」観に目を向ける機会になるのではないか。
(3080円 太郎次郎社エディタス)
(吹)

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